入木

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1/23/2023, 10:40:06 AM

珈琲とトーストの焼ける匂いで目覚める朝、
開いたカーテンからは春の陽射しと柔らかい風。
リビングからは人の気配、
私は彼女が朝の支度をしているのだと足音で察して、
起き上がろうとするが、鈍重な頭に暖かさは心地よく。
私はまどろみに身を任せて、夢に帰ろうとする。
ドアを開ける音がする、起こす声がする。
起きようかと思えども、頭は重く、声が遠くなっていく。

瞼を開ける。
暗がりの部屋は夜を示して。
冬の夜は冷たさを貼り付けたように冷たい。
足音は聞こえず、静寂が支配していて、
心臓の音が小さく響いた。
私はまどろみに身を任せて、夢に帰ろうとする。
鈍重なはずの頭は嫌に冴えて、それを拒んだ。

#こんな夢を見た

1/16/2023, 12:04:12 PM

美しい物が好きだった。
きっと美しくなかったから。

絵画や音楽、陶芸や彫像。
音楽から話声、自然とか星空。
全てが美しく思えた。
それは私にはないものだから。

特に憧れたのは心だ。
優しい人が何よりも美しく思えた。
それは私にはないものだから。

#美しい

1/5/2023, 12:24:52 PM

「消えるならこんな日が良いな」
彼女はベランダで煙草をふかしながら言った。
外は朝日に照らされた、雪が輝いていて、
「雲海みたいで綺麗じゃない」
それはいつか乗った飛行機からの景色に似ていた。
「天国の景色もこんな感じなのかな」
感嘆で漏れた息が白く輝く、
魂に色があるなら、きっとそれはこんな色だろう。
「綺麗でもやっぱり朝は冷えるね」
そう言って笑う笑顔には、
一つの陰りすら見つけられなかった。
「でも、こんな朝が好きだな」
私も冬晴れの朝が好きだよ。
「日の有り難さがわかるじゃない」
そうだね、
でも、寒くないと、
暖かさの価値がわからないのは、
悲しいことだと思うよ。
「こんな朝に思い出して」
笑顔で吐いたタバコ混じりの白い息は、
白銀に輝いて、
それは命そのものに思えた。

#冬晴れ

12/26/2022, 11:10:40 AM

永遠は無いと知りながら、
それも求めるのは愚かだろう。

いつの間にか歳をとった。
年の暮に思うのは何度目だろうか。
変わらない様に見えても、
何か変わっているのだろうな。
俺も街も何もかも。

よく行ってたあの店も潰れたよ、
安酒で吐くまで呑んだあの店も、
小洒落た喫茶店に変わってたよ。

変わらないのは呑んでる面子だけだな。
何時まで続くかな。
知らないけど、来年は呑んでる気がするよ。

変わらないものはないけど、
出来るだけ続いたら良いよな。

またくだらない話をしよう。
また歳をとったなんて言いながら。

#変わらないものはない

12/23/2022, 11:31:15 AM

降る雪と煌めく照明は、
誰かの誕生を祝っている。
道行く人は誰もが幸せに見えて、
歩く足元に目線をそらす。
聞こえるのはクリスマスキャロル、
止めてくれ、結局それは無駄だったじゃないか。
ただ静かに祈らせて。
あの灯りだけは消さないように。
それが与えられる物だから。
その為の祈りだから。

#プレゼント

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