なあ、俺はもう老いさらばえた。
もう疲れ果てたんだ。
青い空でさえ、
もはや眩しくて見てはいれないのだ。
枯れていく紫陽花の木を見ろよ。
地に這って、高く空へは行けなかったんだ。
目指さなかったのか、
そういう生まれだったのか。
俺もそういう物だったんだ。
いつかの夢をみるよ。
花緑青の季節に。
俺も花を咲かせたんだ、
そんな事もあった。
昔の話だがね。
薄い雨が包む、薄明るい昼に、
赤い傘を差した、長い髪の女が通りがかってね。
花を見て笑ったよ、紫色の花だったんだ。
柔らかな笑みでね、小さく微笑んだんだ。
光の加減でか、髪が青墨のようになって、
月明かりの凪いだ海みたいな色でね。
それはそれは綺麗でね。
それを今も思い出す。
#初恋の日
明日、世界が終わるなら、
積んでいた本を幾つか崩そう。
明日、世界が終わるなら、
近所の猫の頬を撫ででやろう。
明日、世界が終わるなら、
久しぶりにパスタでも作ろう。
明日、世界が終わるなら、
地平に沈む日をただ眺めよう。
お前がそこにあってくれるなら、
終わりなんて何時でも良いこと。
さよならなんて言うなよ。
世界の終わりじゃあるまいし。
#明日世界が終わるなら⋯⋯
抜け出した後の寂しさを、
ずっと抱えて来たんだね。
逃げ出した夜の虚しさが、
泥濘の中で藻掻いていて。
眠れない夜の水底にて、
誰かをずっと待ってた。
一人ぼっちに慣れても、
痛かった事はそのまま。
痛みはいつか慣れても、
傷はきっと付いている。
哀れみがそっと、抱き寄せても、
それを踏み躙る、僕がいるんだ。
温もりがそっと、寄り添っても、
肌が拒絶してる、君がいるんだ。
優しさだけで、きっと
愛されるなら、きっと
許されるなら、きっと
救われるなら、きっと
こんな風にはならなかったよ。
#優しさだけで、きっと
空の青さも知らず、
草の緑も知らず、
檸檬の黄も知らず、
陽の茜も知らず、
己の目には灰色に見える。
瞳の色も知らぬ、
肌の温もりも、
人の名も知らぬ、
その言葉の意味も、
己の身には余りすぎる。
空の青さも、草木の匂いも、
檸檬の味も、陽の暖かさも、
その瞳の、その人の、
その肌の、その意味を、
意図を。
いっそ灰色であれば良かった。
#カラフル
決まった事がいくつかあって、
いつか別れる事、いつか終わる事、
永遠なんて無い事 、それをいつか知る事。
それなら全部無駄だって、
やけっぱちで放り出すけど、
勿体無くって拾い集めるんだ。
いつか描いた理想とは、
いつも何かズレてるが。
いつか見てた未来とは、
いつも何かが違うけど。
決まっている結果に向かって、
歩いていく美学とは?
有り触れている未来に向かって、
戦っている現実は?
未来は、未来は、未来は、未来は。
決まった別れがあるならば、
間を繕って布にしよう。
決まった終わりがあるならば、
紡いだ布を旗にしよう。
永遠なんて無いから。
墓標に旗を立て意味にしよう。
生きたことと、出会ったことと、
死んだことと、生まれたことに、
全てに理由が、あったかの様に、
結果はすべて、決まっていても、
それを成したことに意味がある様に。
#もしも未来が見れるなら