足取りは左右にふらついて。
意識も同じか。
ふらりと落ちる。
アスファルトは冷たい。
ひとひらの命なら、
桜の花のように散りたかった。
ひとひらの花なら、
皆と一緒に散れたのか。
ひとひらの葉なら、
さよならは言わずにいれたのか。
ひとひらの紙なら、
何かを残せたのだろうか。
そのままでいる。
ひとひらのままで。
#ひとひら
「ただ歩いただけなんだ」
彼女は長い髪をまだ冷たい風を、
髪に纏わらせて言う。
「何処に行きたかった訳でもないんだ」
桜の花びらは逃すまいにと、
彼女に執念深く纏わりついて。
「行きたい場所を選んだんじゃ無いんだ」
こらえる様に語る声とは裏腹に、
薄笑いの様な自笑する様な表情で。
「行ける場所を選んだんだ、
この身のままで、描いたままで受け入れられる様な所を」
自笑は深くなり、口先の歪みと目の潤みが深くなる。
「描けるなら良かった、ずっと望まれた姿で」
潤みは水滴へと姿を変えて、彼女の頬を伝っていく。
「なんでそんな風に生きられなかったんだろう」
自笑の笑みは無くなり、彼女がかつて嘲笑した、
泣き声が遠く聞こえる。
「もう疲れたよ」
少女の声で呟く。
かつて冷笑を浴びせた声で。
「君なら解ってくれる?」
縋るような声で、少女はそう言った。
#好きだよ
ここは冷たくて、鉛の様に重たい。
寂しさが針の様に刺しても、
その冷たさのせいにしては、
目を背ける日々です。
明くる朝には消え去ろう。
明くる日と共に消え去ろう。
悲しみが対価がそれらなら、
日はその為に登るのか。
それらが君の対価なら、
それらと共に立ち去ろう。
夜と共に消え去ろう。
明くる日の朝ならば、
それが対価になるのなら。
君がそれの対価なら、
僕も共に消え去ろう。
夜と共に消え去ろう。
それが対価になるのなら。
#君と
鳥が死んでいた。
寒さの残る朝の霜の下で
そっと躯の霜を払う
目を閉じたその顔は
眠るように見えた
お前も疲れたか
俺も疲れたよ
おやすみと
一つ労る
そう言われたかったか
俺もそうだったよ
掌に抱き上げた
体は氷のように冷たく
背を押すように
そっと空にかざした
高く飛べるようにと
#空に向かって
朝を見ていた。
日は薄く昇って。
光を見ていた。
憐れみに似た感情で。
空を見ていた。
薄ぼやけの果ての黒を。
夜を見ていた。
追いやられていく背を。
ここに日は届かないから、
夜もここに来たらいいのに。
そおっと生きている。
#日陰