揺蕩うような感覚で、今日を泳いでも。
高潮に攫われて、明日へ流されて。
終わらない微熱みたいに、
なんとなく怠い日々を過ごす。
いっそ、もっと熱くして、
全部燃やしてくれたら良かった。
揺蕩う水さえ無くしたら、
きっと歩くしか無いのに。
揺蕩う熱に溺れてた。
#微熱
「愛されたかった訳ではないのです。
許されたかっただけなのです」
震えた声で彼女は語る。
「優等生でいました、そうすれば褒められる気がしたから」
彷徨きながら、その場をぐるぐると回りながら。
「テストで良い点取りました、褒めてくれたから」
落葉を蹴散らす音は声と共に大きく。
「殴られても笑いました、良い子だって言われたいから」
一際大きく落葉を蹴り上げて、彼女は止まった。
「全てやりました、許されるために」
小さな声で堪える様に絞り出した、
「どうすればよかったんですかね?」
口角を歪めた、その顔は自嘲な薄笑いで満ちていて。
「許されたかっただけなんです」
夕日が彼女の顔を照らす。
「愛してくれなんて言わなかったのに」
日に輝く涙だけが美しく。
言うべき言葉など見つからなかった。
#どうすればいいの?
キャンドルの火が消える頃に、
この部屋を出よう。
暖かな灯に慣れる前に、
この部屋を出よう。
さよならの言えるうちに、
目が慣れぬ内に、
暗闇で生きていけるように。
光など求めないように。
火をそっと溜息で吹き消した。
白い煙が後悔の様に残った。
#キャンドル
子猫がいた。
そこにいたんだよ。
もういないけど。
いってしまったから。
ぬくもりだけを残して。
明日には俺も消えるよ。
あんたはどうする?
#子猫
降る秋の風は湿った土の匂いがした。
11月の昼下りは、肌触りに冬を混じらせた。
ブーツに纏わりつく落葉は夏に置き去った後悔か、
足取りを少し躊躇わす。
遠くへ行こう。いま決めたのだ。
秋の日は心もとなく、影は薄ぼやけ。
落葉を蹴散らす、秋風は味方ではなく。
だが、それが心地よかった。
#秋風