「狭い部屋」と聞いて、あまり良いイメージは湧かない。部屋は広いほうがいいに決まっている。賃貸で部屋を借りるなら、家賃の許す限り広い物件を借りたい。しかし世の中には、狭い部屋が魅力的になるパターンもないわけではない。「秘密の小部屋」や「秘密基地」がそれだ。ほんの僅かな空間でいい、なんなら押し入れのなかくらい狭くてもいい。そこを外界と隔絶した自分だけの空間とし、自分の好きなものだけを持ち込むのだ。けっして俗世間や生活感を持ち込んではいけない。スマホなんてもってのほかだ。例えば、柔らかなクッションと1冊の本を持ち込み、心ゆくまで読書に耽るのもいい。例えば、スケッチブックと鉛筆を持ち込み、心のままに落書きをするのもいい。例えば、いまや時代遅れとなったCDプレイヤーで、ミュージシャンのアルバムを聴くのもいい。そんな秘密の小部屋を、きっと誰もが必要としている。
失恋。それが今日の作文テーマだが、ちょっとここで正直な告白をしなくてはならない。それは、「自分は失恋をしたことがない」ということだ。ちょっと勇気のいる告白である。だって、同年代の雑談で「私、失恋したことないんですよねー」と言う場面を想像してみてほしい。こんなに印象の悪い発言もなかなかない。ある種の自慢だと受け取られるかもしれない。しかし、よく考えてみると、本当に自慢になるだろうか? 異性にモテるとか、恋愛経験が豊富だということは自慢になるだろう。しかし自分は、高校時代に生まれて初めて告白した相手とそのままずーっと付き合い続け、社会人になって結婚したというだけだ。非常にシンプル。多数の異性にモテたわけでもなく、恋愛経験はむしろ乏しいと言えるかもしれない。そうして、世にあふれる失恋ソングにいまひとつ共感できない大人になった。まるで、大人になるための必修科目を履修しそこねたようではないか?
「正直」というのが、このアプリを使いはじめた初日(つまり今日)の作文テーマだ。自分は正直さというものを、とても好ましく思っている。できるだけ正直に生きて行きたいと思う。でも実際のところ、今の自分が気持ちを正直に話せる相手は、夫ひとりしかいない。かつては母親が、なんでも話せる最後の砦のような存在だったが、去年亡くなってしまった。職場の同僚とは必要最低限の会話しかしないし、友人もいない。他人と話すとき、無意識に自分の気持ちを隠してはぐらかしているような気がする。まっすぐ相手の目を見て話すことは苦手だ。斜めに視線をはずして会話する癖がついている。残念ながらどう考えても、自分は正直な人間とは言えないだろう。