『現実逃避』
逃げて
逃げて
逃げ続けていた
夢の中なのは
ぼんやり分かっていた
捕まったらダメだと
立ち止まってはダメだと
どこか物陰に隠れなくてはと
誰かがこちらにやってくる
笑みを湛えて何かを喋る
『 』
飛び起きてみれば
滝のような汗と
荒い息
机の上には
進路志望表
こいつのせいかと
安堵と恨みが交錯する
机の上の魔物を片付けなければ
そしてこの先の道を見据えた
逃げるのはもう止めよう
何かが喋りかけてきた『 』を
もう2度と聞くものか
『君は今』
過去に
現在に
未来に
僕は今怯えている
ひたすらに布団をかぶって
過ぎ去るのを待っている
北風と太陽など関係ない
一人寂しく震えている
君も震えているのだろうか
それとも
青空の下駆け抜けているだろうか
震えているならば
一緒にコタツにでも入ろう
駆け抜けているのなら
僕の手を引っ張っていって欲しい
僕は今
気の抜けた炭酸のような心で
ぼんやりと庭の雪を眺めている
『物憂げな空』
木枯らしには至らない風の中
日の沈む
遠くの山だけが燃えている
寂しさの中に痛みを感じ
痛みの中に愉悦を見つける
このまま星を観て
月が上がりきるまで待ってみようか
冷え冷えとした夜の帳が下りていく
流れ星でも落ちてこないか
かじかんだ手先を誤魔化せるだろう
やや後悔してきたが
南中していく満月を見る頃には
寂しさも
痛みも
その中の愉悦も
綺麗に眼から流れていった
『小さな命』
野原に咲くカタバミも
蜜に誘われるアゲハ蝶も
夜に鳴き鳴らすスズムシも
北の海に住むクリオネも
みんなきっと同じ命
本当に小さな命たち
僕はそれよりずっと大きいけれど
命の価値は同じだろうか
無機質な宇宙の彼方には
何か蠢くものがあるだろうか
太陽の下に命があるとは限らなくて
深く冷たく暗い海の底にも命はある
平等なものとは思わないが
煌めくものはきっとある
そうだと僕は信じたい
『Love you』
「もういいかい」
「もういいよ」
夕暮れの近い校庭で
いつも通りのかくれんぼ
見つけてくれるのかという不安
見つけて欲しいという希望
せめぎ合う僕の心
心理学などは分からない
でもきっとここなら
すぐに見つけてくれるだろう
不安をかき消して息を潜める
できれば
真っ先に見つかりますように
君の笑顔を最初に見たい
ほら
言っただろう
「みーつけた!」