※もしも過去へと行けるのなら
勇者様とおだてられ、国の用意した仲間と共に魔族を討伐した俺に待ち受けていたのは、堕落勇者魔王という不名誉な烙印だった。
世界の人々が魔族も共存相手だと思ってたことを、俺は知らなかった。奴らは倒すべき敵だと聞かされ続けてきた。
俺を勇者として使った国も、世界が相手になった途端あっさり手のひらを返した。曰く、邪教徒であることを世界に証明するためあえて放逐したのである、と。
「魔王を倒せば世界が救われ、救済者である勇者様も神の祝福を受け、元の世界へお帰りになられるでしょう」
今思えば都合のいい甘言だ。自国都合で人を異世界から攫った国に良識があるか疑うべきだった。
もしこの世界に時空魔法があるならば───
俺は堕落勇者魔王として、あの国を滅ぼしてやる。
※またいつか
また、いつか。
そんな曖昧な約束が果たされることは無い。余程の激運でも持ち合わせていなければ。
飛び交う戦闘機と止まぬ爆撃。最早、自国を護る為というより敵国戦闘機と共に自国を破壊していた。そしてそんな状態に慣れてしまっている。
国の人攫いと言って過言でない徴兵は、もう何度目だろう。年寄りと子供が集落の要になるほど男女問わず連れ去られた。
自ら志願した息子の笑顔が脳裏に映る。
「またいつかお会いしましょう!」
約束が果たされることを信じて、私は今日も防空壕へ逃げ込むのだ。
※星を追いかけて
望遠鏡と呼ばれる物を献上された時には、既に星を用いた占術は廃れつつあった。
されど星は人々を魅了する。
夜道明かりに、美しき天の川に、強き輝きに。
それらをより間近で見れるとなれば、自然と望遠鏡も流行りだした。
人々は毎夜、望遠鏡を覗く。
その手に届かぬ星の輝きを追い求めて。
※今を生きる
なので選挙速報を見ておるよ
※飛べ
あの飛行機のように飛べと言われた。
勿論比喩だと分かっているが、その規模のでかさに俺は慄く。
国際線から見える飛行機――つまり、世界中を見て回れという意味で間違いないだろう。
まだ入社三年目の若造だ。大学で伸ばした高い鼻をボキリとへし折られ、社会人勉強中の身。
将来を期待してくれているのか、脅しているのか……。
上司の言葉の真意が分からない小鳥の俺は、持っていた野菜ジュースを一口飲んでから、すまし声で言った。
「まず飛ぶ練習で、ニューヨークですか」
上司は何も言わず、少し笑うとコーヒーをすすった。