※もしも過去へと行けるのなら
勇者様とおだてられ、国の用意した仲間と共に魔族を討伐した俺に待ち受けていたのは、堕落勇者魔王という不名誉な烙印だった。
世界の人々が魔族も共存相手だと思ってたことを、俺は知らなかった。奴らは倒すべき敵だと聞かされ続けてきた。
俺を勇者として使った国も、世界が相手になった途端あっさり手のひらを返した。曰く、邪教徒であることを世界に証明するためあえて放逐したのである、と。
「魔王を倒せば世界が救われ、救済者である勇者様も神の祝福を受け、元の世界へお帰りになられるでしょう」
今思えば都合のいい甘言だ。自国都合で人を異世界から攫った国に良識があるか疑うべきだった。
もしこの世界に時空魔法があるならば───
俺は堕落勇者魔王として、あの国を滅ぼしてやる。
7/24/2025, 10:41:09 AM