※終点
終点という馬鹿デカい看板が、目の前にある。
しかもその前に、これまたデカい大穴まである。
確か俺、階段から落ちただけなんだが?
振り返ると、俺を見て驚いた顔をした人間がいた。
ただその景色は不気味なことに、誰も動かない。
そしてカラフルなはずの世界が白黒だった。
納得した。納得したよ。
だから、なあ。聞かせてくれ。
死んだ後に大穴に落ちるまでが人生なのか?
※上手くいかなくったっていい
世の中それでまかり通ると思ってんのか?
給料に見合った仕事の出来ない奴に
「給料泥棒」って渾名がつく程度には常識だせ?
上手くいかなくったっていい
それが許される場面が如何に少ないか
時事ネタで言うならパリ五輪は正にこの状態だな!
……と、ご機嫌に高説を垂れた俺は今
発言が生意気だという理由で、窓際に追いやられた
何で上手くいかないんだよ!
※蝶よ花よ
育ちが違う、そう思った。
美しい所作。目を引くかんばせ。器量も良い。
私のような小商いの娘とは存在感が違った。
「あの様なお方こそ、蝶よ花よと育てられたのかな」
御用聞きを終え、隣を歩く父にそう聞く。
父はくくっ、と喉を鳴らした。
「花魁の出てあるあの嫁子が、蝶よ花よと育てられているわけがないだろう。むしろ毒を含む花の中で、一番に強かな毒蝶であろうがな」
※最初から決まってた
そう、最初から決まっていたのだ。
日常、政治・経済、スポーツ……全ジャンルにおいて
散々使い回された「最初から決まってた」
この一言がどれだけ難題であることか!
白夜が終わらぬ。太陽が落ちぬ。
不吉なりと占い師が祈祷を捧げる。贄を供物とする。
されど太陽は動かず。落ちぬ、落ちぬ。
陽の光で眠れぬ夜が続き、やがて精神を蝕んでゆく。
誰かが囁いた。これは滅亡の始まりであると。
誰かが呟いた。今年だけの事なのか?と。
誰かが叫んだ。もううんざりだ!太陽は消えてしまえ!と。
けれど白夜に終わりなし。
当然だ──そうシステム管理されたドーム内に彼らはいたのだから。
「今回の研究結果、どうなりそうです?」
「白夜を数ヶ月続けても人間は狂う。今しがた結論を出したところだよ。あとは、そうだな……被検体がどこまで持つか賭けるかい?」