傾月(神楽屋)

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8/8/2023, 6:39:11 PM

5人目にして初めての女の子。しかも年の離れた末っ子。
両親も4人の兄たちも、それはそれはもう大喜び。
蝶よ花よと可愛がられた女の子は、その立場に甘んじること無く教養を積み、才色兼備の素晴らしい女性へと成長した。
当然、世の男性陣がそんな彼女をみすみす放っておくわけもなく、いついかなる時にも引く手数多だった。
しかし、そこにいつだって立ちはだかったのは父親と4人の兄たちだった。 "娘にはもっと相応しい男がいる" と恋文を破り捨て、 "妹に手を出す輩は許さん" と逢瀬に来た者を追い返た。彼女に言い寄る男たちを悪い虫と言わんばかりの酷い態度で追い払い続けたのだ。
母だけは、娘の行く末を案じてくれていたが、それも父や兄たちの耳には届かなかった。いつしか、言い寄ってくる男は誰もいなくなってしまった。

両親も兄たちも鬼籍に入ってしまった今、私は本当に一人になってしまった。父も兄も、これで満足なのだろうか。あの頃、父や兄たちをきちんと説得出来ていたら、未来は変わっていたかもしれない。最近はこうして、詮ないことばかりを考えてしまう。
家の前を若人たちが "ここのお婆さん、ずっと独り身でご近所付き合いもほとんど無いんだって" と言いながら通り過ぎて行く。
「そうさね。箱入りなものでね。」と独りごちた。


―――箱入り婆


                   #36【蝶よ花よ】

8/8/2023, 9:43:18 AM

ここは雲の上…だと思う。
住人の数は多く、皆思い思い暮らしている。
住人は人型だけではない。様々な生き物の形をしていて、皆一様に薄ぼんやり光る発光体だ。
形は違えど皆穏やかで、ここに争い事は無い。
いつまでもここにいたいような気もするが、ここには決まりがある。次の行き先を毎日1回は探さなければならないこと、行き先が見つかったら必ず一両日中に出立しなければならないことだ。
行き先を見つけるには、遠眼鏡を使って下界を見るしかなく、遠眼鏡には数に限りがあるから、毎日順番待ちの列が出来る。
今日も順番待ちの列に並ぶ。先頭を見ると遠眼鏡を使っているのは猫型と人型と…熊型?
猫型の発光体が強く光った。行き先が見つかった印だ。
遠眼鏡を次へ渡し、雲の門へ歩いて行く。門番と一言二言会話し、開いた門から差し込む眩い光の中へ溶け込んで行った。
周りが少しざわついたが、すぐに元に戻る。これが日常の風景なのだ。
自分の順番が回ってきた。遠眼鏡で雲の隙間から下界を見る。
下界に何が見える訳でもない。ただ霧がかかったような霞んだ景色が見えるだけ。皆も同じらしい。飽きるまで眺めて、何も変化がなければそのまま遠眼鏡を次に回して終わるだけ。
しかし今回はいつもと違った。景色が霞んでない。驚いてあちこち見てみると、1つの家が光っているのを見付けた。行き先が見付かったのだ。自分が光っていることに気付いた。とうとう出立の時が来たのだ。
門へ歩いて行く。門番と目が合う。"行っておいで。どうかお幸せに"と餞の言葉を贈られた。ありがとうと微笑むと、光の中へ駆け出した。


―――旅立ち[生]


              #35【最初から決まってた】

8/6/2023, 3:00:41 PM

〘テキーラ·サンライズ〙

―材料―
・テキーラ 30ml
・オレンジジュース 90ml
・昇りくる太陽のシロップ 2tsp.
・氷 適宜
・スライスオレンジ 1枚

―作り方―
①タンブラーの8分目まで氷を入れ、テキーラとオレンジジュースを注ぎステアする。
②昇りくる太陽のシロップをグラスに静かに注ぎ沈め、層を作る。
③スライスオレンジを飾る。

―備考―
※「昇りくる太陽のシロップ」は、最寄りの宇宙商店でお買い求めください。手に入らない場合は「グレナデン·シロップ 2tsp.」で代用可能です。


〘テキーラ·サンセット〙

―材料―
・テキーラ 30ml
・レモンジュース 30ml
・沈みゆく太陽のシロップ 1tsp.
・氷 1cap
・スライスレモン 1枚

―作り方―
① テキーラ、レモンジュース、沈みゆく太陽のシロップを氷とともにミキサーにかける。
② ①をグラスに注ぎ、スライスレモンを飾る

―備考―
※「沈みゆく太陽のシロップ」は、最寄りの宇宙商店でお買い求めください。手に入らない場合は「グレナデン·シロップ 1tsp.」で代用可能です。


―――銀河レシピより抜粋


                     #34【太陽】

8/6/2023, 5:23:11 AM

                        夜半
ジャンジャンジャン
                けたたましい音がする
ジャンジャン
                   ああ、五月蝿い
ジャンジャンジャン
                 暗がりで目を開ける
ジャンジャン
                    外が騒がしい
ジャンジャンジャン
             "山火事じゃ!皆早う逃げろ!"
ジャンジャン
                  カーテンを開ける
ジャンジャンジャン
                人々が逃げ惑っている
ジャンジャン
            裏山の上の方に赤い炎が見える
ジャンジャンジャン
                   雷でも落ちたか
ジャンジャン
                 それにしても今時、
ジャンジャンジャン
             〇〇で知らせるって珍しいな
ジャンジャン
                  ああ、逃げなきゃ
ジャンジャンジャン
                    足がもつれる
ジャンジャン
                  前方へつんのめる
ジャンジャンジャン
           壁へ頭を打ちつけて意識が遠のく
ジャンジャン
ジャンジャンジャン
ジャンジャン


目が覚める
壁に投げつけられた目覚まし時計が、変な鳴り方で鳴り続けている
ああ、夢か
カーテンを開けて裏山を見る
緑豊かでどこも燃えていない
ホっとひと息ついた瞬間、ふと思い出した。
そうだ、あれは半鐘、半鐘だ。
半鐘の記憶を夢に見たのだ。


―――鐘の記憶


                    #33【鐘の音】

8/5/2023, 2:40:01 AM

「つまらないと思って嫌々するより
 つまらないことでも興味を持って
 取り組んだ方が身になるよ」

って、つまんねぇもんはつまんねぇんだよ!
何言ってんだ、このバーカ!

とか思ってゴメン、中学の時の校長センセ。
だって、話が無駄に長くてつまんなかったんだもん♡


              #32【つまらないことでも】

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