太陽が東から昇り 西へ沈むこと
月が満ち欠けを繰り返すこと
北極星が同じ場所で輝き続けていること
季節が移ろうこと
夏は暑さが厳しく 冬は寒さが厳しいこと
春は桜が美しく 秋は紅葉が美しいこと
天気も日々変化すること
雲が刻々と形を変えていくこと
雷は音が聞こえるよりも先に 光が見えること
山があり 谷があること
川が上流から下流へ流れること
海の潮が満ち引きすること
全ての生き物が 生を繋ぐため営みを続けていること
全ての生き物の生が いつか必ず終わりを告げること
自分もその一部だということ
―――いわずもがな
#6【私の当たり前】
「父さん!めちゃくちゃキレイだね!」
今にも駆け出してしまいそうな息子の左手をしっかり握りしめながら、その弾む声に返事をする。
父親として面目が立っただろうか。
先日、不可抗力とは言え約束を破ってしまったお詫びとして、今日は息子と2人でキャンプに来ている。
いつもと違う、少し遠い所にある穴場のキャンプ場。山も川もあり、いろいろと体験するには良い環境だ。
到着が思ったより遅くなってしまったので、テント設営、魚釣り、焚き火の準備、食事までを、日のある間に一気にやりきった。妻が用意してくれていた握り飯の美味かったこと。今頃、下の子と一緒に何してるかな…。
家に思いを馳せながら食後の片付けをしている内に、1日の疲れがどっと出たのか、気付いたら息子が椅子に腰掛けたままうたた寝をしている。
少しだけ寝かせておこうかと思ったが、今日のメインイベントがまだ残っている。そっと揺すって起こす。行こう。
「父さん!キレイだね!灯りがこんなにいっぱい!」
本当に来て良かった。息子とこんなに長い時間2人だけで過ごしたのはいつ以来だったか。
「こんなに楽しいなら、父さん、たまには約束破っても良いよ!」
眼下に広がる街の灯りを望みながら、思いがけない発言に苦笑する。名誉挽回とはまだ言えないようだ。
テントに戻るまでの道すがら、いろいろなことを話した。今日のこと、学校のこと、友だちのこと、家のこと。子どもは子どもなりに、いろいろ感じ取ったり一生懸命考えたりしているんだなと感心する。はて、自分がこれくらいの年齢の頃はどうだったろうか…。
テントに戻った途端、電池が切れたかのように眠りについた息子を横目に見ながら、明日のプランを確認する。明日は龍見学ツアーか。
息子の隣に寝転びながらさっき見た夜景を思い出す。あの灯りの中に、きっと自分たちと同じような "人の親子" がいるに違いない。その親子も自分たちのように幸せな時間を過ごせていたら良いな、などと取り留めのないことを考えている内に眠り落ちていった。
―――続・信頼と実績 [鬼の親子]
#5【街の明かり】
☆七夕ゼリーの作り方☆
―材料―
・ゼラチン 10g
・水 大さじ4
・サイダー 500ml
・晴天の青色 1滴
・煌めく星 2個
・星屑 適量
―作り方―
① ゼラチンを水と混ぜてふやかし、電子レンジで10秒程度
温めてゼラチンを溶かす
② 琺瑯の容器にサイダーと晴天の青色を入れて、そっと混
ぜる
③ ②に①を入れて、そっと混ぜる
④ ③を冷蔵庫に入れて冷やし固める
⑤ 固まったゼリーをフォークで軽く崩して、クラッシュゼ
リーにする
⑥ 器に⑤を入れて、煌めく星と星屑を入れて完成!
―備考―
※②③で混ぜる時、勢いよく混ぜると炭酸が抜けてしまう
ので、そっと混ぜてください。
※「晴天の青色」「煌めく星」「星屑」は、最寄りの宇宙
商店にてお買い求めください。
※深い青色にしたい場合は「宵の青色」がオススメです。
※星屑はアラザンでも代用できます。
―――銀河レシピより抜粋
#4【七夕】
L氏「え?Xですか?高校の時の同級生です。クラスは別だ
ったんですがね、部活が一緒で。なんだか気が合って
ねぇ。休みの日にはよく2人で自転車で出かけたもんで
すよ。遠くに行くのが好きな奴でねぇ、ええ。だから
って何もそんなに遠くに行かなくても…なんてね。」
Q氏「Xは以前私が勤めていた会社の同期です。彼はいつも
全力で仕事に取り組む人でしたよ。速くて正確な仕事
ぶりは社内でも高評価で。みんなが1つ仕事を終わら
せる間に、彼は3つも終わらせるんです。それでいて正
確なんですから、凄いですよ、ほんと。社長なんて彼
のことを韋駄天って呼んでましたよ!今時、韋駄天っ
て…言わないし聞かないですよねぇ、ははは。あんな
に順調だったのにあっという間に転職して。ほんと、
何をするにも早過ぎるんですよ…ね。」
V嬢「Xさん?週に2〜3回、仕事帰りに来てくださって。
お席はいつもカウンター。毎回決まった銘柄のウイスキ
ーを1杯だけ飲んで、挨拶もそこそこにさっさと帰っ
ちゃうんです。こんなに可愛い私が目に前にいるの
に、失礼しちゃうでしょ?たまに、もう1杯私に付き
合ってくださらない?ってお願いしてみるんだけど、
キミの美しさに酔っちゃったからこれ以上は無理だな
ぁとかなんとか言って、煙に巻いて結局帰っちゃう。
ほんと掴み所の無い人、煙だけにね。で、とうとう
自分が煙になっちゃうんですもの、笑えないし泣けな
いわ。」
―――X氏告別式にて
#3【友だちの思い出】
「父さん!今朝『今夜は晴 「父さん!今朝『今夜は晴
れるぞ。星空を見るにはも れるぞ。夜景を見るにはも
ってこいだ』って言ってた ってこいだ』って言ってた
じゃん!なのに見てよ、こ じゃん!なのに見てよ、こ
の一面の曇り空!」 の一面の雲!」
「いやー、スマン。昨日の 「いやー、スマン。昨日の
同僚の話では今夜はキレイ 同僚の話では今夜は曇らせ
に晴れるはずだったんだが るはずじゃなかったんだが
なぁ」 なぁ」
「せっかく父さんと星空を 「せっかく父さんと夜景を
見られると思ったのに…」 見られると思ったのに…」
「申し訳ない…。よし!次 「申し訳ない…。よし!次
の休みは一緒にキャンプに の休みは一緒にキャンプに
行こう!山でカブトムシを 行こう!入道雲で龍を探し
探したり、川で魚を釣った たり、天の川で魚を釣った
りしよう!で、夜は一緒に りしよう!で、夜は一緒に
星空を見よう!な!」 夜景を見よう!な!」
「本当に?やったー!約束 「本当に?やったー!約束
だよ!父さん!」 だよ!父さん!」
(やれやれ。父はツラいぜ) (やれやれ。父はツラいぜ)
[地上:人の親子] [天上:鬼の親子]
―――信頼と実績
#2【星空】