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7/26/2025, 10:24:15 AM

ふわふわぽむぽむ。優しいピンクのうさちゃんの、スクイーズシールを大事に持っていた。
嫌なことがあったとき、疲れることにたちむかうとき、一日無事に生きのびられたひ。
引き出しの奥からそっと取り出して、ひとり温かく握っていた。それだけですべて解れてとけていくから。
齢8のころ、ひそかなオアシス。
誰にも見つからないように、誰にも取り上げられないように。大事にだいじに、引き出しの奥にしまってたのに。

うちに帰ったら何もなかった。
特別柔和な顔した父が、わたしの留守のあいだに、部屋の中身を全て捨てたと教えてくれた。整頓ができていなかったから。捨てておいたからね。ぜんぶ。にこにこ。

とくべつ驚いたりはしなかった。殴られなかったからマシだと思った。いかにもやりそうなことだと思った。泣いたら思うツボだと思った。

すこしの失望だけを抱えて、こらえて覗いた引き出しの中は。本当に聞いていた通り、糸くず一つ、跡形なかった。

5/31/2025, 3:03:23 AM

窮屈でたまらない、恐ろしくてたまらない
抱き寄せる何かも見つからない
同じ世界を見ていないから、
血反吐吐くほど動悸が止まらない
消えてしまうのは分かっているのに、
言葉がいつも伝わらない

5/4/2025, 3:39:59 AM

茜の咲いた遠き日に、顔を見せてと目を細めては

4/28/2025, 9:55:05 AM

失った次の日の朝は、その前の日と何ら変わらず、
見慣れた顔をしてそこにあった。

3/29/2025, 1:37:41 AM

何を恐れているのかも、もうわからなくなった

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