仏の教えを忘れた。
迷子になった気分だった。
窓の外には雨が打ち付け、無数に雫をつくっていた。
空は白く、頭のように霞がかって…
このやすりを掛けられたような気持ちも、何とよぶのか、忘れてしまった。
意思の伴わぬ悪夢でした。
美しい声は出なくなりました。
どれ程だったか残っていないが、
それは綺麗な歌声でした。
クラスメートが死んだ!
卒業を目前にして、今までの全てを無駄にして死んだ!
棺の上にはONE PIECEの単行本が置かれていた!
休暇前に、はいさようならと頭を下げたままの姿で記憶の中の彼は止まっている
それは確かに骨を含んでいたが、露になってはいなかった
生身のままで、ただそこに生きていた!
ご冥福をお祈りしようと、ただ意味がわかるだけの言葉を担任が吐いた!
彼の姿はまだ此処に似合う
酷く不釣り合いな音声が私たちを置き去りにした!
彼はこれからまた生をやり直すのか
クラスメートだった者は、年下の誰かに生まれ変わるのか
私は誰かの前世の続きに、生き続けているのか
彼の人生の背景に過ぎなかった私が、生き続けるのか、自我を持って
誰かの前世の背景は、本人が死んだあとにも生き続けるのか!
いつも居眠りをしていた姿を確と この瞳に覚えているのに
ひと月前まで通じる言葉が確かに間にあったのに
今まで適応されていた常識は、きっともう無い
彼はもう、次に目を開けたときに漢字を読めない
触れた教科書を開ききらぬまま彼は学校に来なくなった
こんなことを前提にして、入学式で共に名を呼ばれたわけではない
葬儀では彼が死ぬ一週間前に、彼がヴァイオリンで演奏したカノンが流れていた!
彼の一生のような音色が、ただつらつらと流れていた!
私はこれからカノンを聞く度に、彼を思い出す一生が確定した!
彼は死んだ!
私が焦がれて望むことなのに、何故それは彼だった!
ただ、心は不思議なばかりである!
生前言葉も交わさなかった
彼は掃除をさぼって嫌われていた
それでも、思い出す姿には顔がある、既に今にはないはずの姿であるくせに
当たり前に、またどこかで会う気で私はいる!
自分が親世代になったと、まだ受け止めきれないでいる
まだ高校球児を大人だと思っていて、
高校生に駆け寄れば、頭を撫でてもらえると思っている
まだ夢の国に行けば、彼らが屈んでくれると思っている
まだホログラムのそよぐカトラリーの方が馴染みがあるし、矯正のついた箸の方が自分の物らしい
手を引かれなければ新幹線には乗れないし、
スタバに行くと絵本を探す
想像したときのパン屋の台は目線より高く、
欲しいものも無いトイザらスに心を踊らせる
私だけか、迷子なのは
ステンドグラスにアクアリウム、ハミング、白に、無機質な浜辺
全部あなたのcoreに見える
淡い活字で想いを告げたい