たった1つの希望#36
「僕がこの気持ちを恋だと認識したときにはもう熱しきっていたんだよ。」
私が屋上で聞いた言葉。
最初は何を言っているのか全然わからなかったけれど、理由を聞いて納得できた。
彼はずっと私に片思いをしていたらしい。
彼は私に「君を好きでいられたことがたった1つの希望でここまでなんとか学校に来れた理由だった、君を好きでなければ頑張れなかった」と。
私は誰かの生きる希望になれていたらしい。
それは嬉しいことだけど、私の希望は夕暮れの空に消えていった。
街へ #35
また私は一人で深い夜の街へ駆けていた。
晴架に呼ばれたわけではない。
夜の風を浴びたかったわけでもない。
ただ独りで満たされない心を満月で満たそうとした。それ以上の意味はない。
私みたいに太陽に頼らないと輝けないから。
私は自分と月を重ねてしまう。
私と一緒にしないでほしいと言われてしまうかもしれないけれど、私と月は違う。
そんなことは分かっているよ。
私は誰かの相談にしかのれないし、多分いらなくなったらまた捨てられるだろうなという怖さがあるけれど、月はずっと空にいる。
私たちに安らぎと優しさをくれる。
捨てられたりなんかしない。
いつも私たちを見守ってくれている。
特別な夜 #34
あぁやっぱり私には言えそうにないや。
本当の気持ちなんて伝えたらまたあの人に甘えてしまうだろうな。
もう終わりにしたはずの関係に縋れないのにまた縋ろうとしてしまう。
何も得られないのに。
そんなこと自分がよくわかってるはずなのに。
最後まで言えなかった"ありがとう"をまた心の中で腐らせて。
そんなことをしているから私の誕生日の特別な夜になってやっと気づく。
私はあの人がいないと何もできないんだってことを。
ここにあの人がいないことが何よりの証拠。
閉ざされた日記 #33
いつからだろう…
私がペンを握らなくなったのは、
いつからだろう日記帳を開かなくなったのは、
最初は亜紀ちゃんにすすめられて買った日記帳。
私の思い出になるはずの日記帳でいっぱい書くつもりで可愛いのを買ったのに、気づけばホコリを被っていた。これは別に悪いことじゃないはずなのに罪悪感を覚えていた。あんなに輝いて見えた日記帳の表紙が今はうるさく見える。秋から冬になって私は亜紀ちゃん以外にも静玖ちゃんという新しい友達ができた。友達になるきっかけなんて些細なことできっかけは、朝の電車であいさつをしたのがきっかけだったかな。そういえば亜紀ちゃんにも六花ちゃんという新しい友達ができたみたいで最近はその四人で集まることが増えて、いつのまにか閉ざされた日記。
最後に書いたのはいつだったかな。
どうして #32
「私、木場晴架は7年付き合った彼とお別れしました。」
そう言い放った晴架の目にはもう涙はなかった。
あなたはどうしてそんなにスッキリした顔で告げられるの?
どうしようもないことなのは仕方がないのかもだけど、私はそんなにスッキリできないよ。
やっぱりそれはお別れのしかたなのかもしれないなと晴架の家をあとにしてゆっくりと帰路について考えたりした。
穏便ではない一方的な別れ方。
浮気をしていた相手も相手だけどもっといい別れ方があったのかもしれないと今更ながらに思う。
今夜も星は見えなかった。