10/20/2022, 10:29:37 PM
夫婦喧嘩の始まりはいつも些細なことだ。
今日は廊下の電気が消えてなかったとかそういう理由であった。普段であれば消せばいいだけのことである。なぜかそれで怒りにスイッチが入ってしまうのは、過去の見てみぬふりをしてきた何かがかまってほしいと言っているのだ。
その何かが寂しそうにこっちを見ている。
時折見せる笑顔が痛々しい。
幼い娘がそれと同じような顔をする。
娘は以前作った立て札に手を伸ばす。
そこにはこう書いてある。
ドッキリ大成功!
潤んだ瞳で私たちは手を取り合った。
10/19/2022, 10:38:57 PM
只今、安全確認を行っております。発車までしばらくお待ち下さい。
乗っている電車は、ちょうど反対側の車両とすれ違うところで停まっている。
ドアにもたれかかって外を見ていると、同じようにもたれかかっている反対側の人と目が合う。
6秒続いたら。とわたしは思う。
安全確認がとれました。まもなく発車します。
恋は今、走り出した。
10/18/2022, 10:34:17 PM
雨が三日続いて、晴れた。
秋じゃなかったら、泣かなかったと思う。
10/17/2022, 10:36:04 PM
わたしのことは忘れてください。
と綴られた手紙が下駄箱の中に入っていた。
入れる場所を間違ってるんですが、どなたでしょうか。せめて名前でも書いてくれたらいいのに。
あと、あなたのことを忘れることはできませんので。と、20年後の僕が言ってます。
あなたは僕の妻になるようなので。
10/16/2022, 10:36:51 PM
古着屋でコートをあてがっていて、ふとポケットに手を入れたとき。
なにかがある。
それに触れていると、じんわりあたたくなって、すごく落ち着いた。
ポケットからそれを取り出そうとしたけれど、出てきた手のひらには何もない。
しばらくてのひらを見つめた。
コートは戻しておこう。
誰かがまたこれに触れられるように。