あなたの鋭い眼差しはわたしを不安にさせます。
なのに、ニコッと笑顔になればメロメロになってしまいます。
あなたが恋人であったなら、わたしはどうなってしまうのでしょう。
あなたは恋人ではないけれど、そんな気持ちにさせるなんて。
2歳の息子よ、どうか女の子を泣かさないでおくれ。
私はいま赤ちゃんをやっている。
そしてミルクが飲みたくなったところなのだが、彼らはどうやらそれに気付いていない。
私はまだ言葉が出ない。
ミルク! と言おうとしても言えなくて、最終的には泣くしかなくなる。泣くのはどっと疲れる。どうにかして伝えるすべはないものか。
と考えているというのに、高い高いをされる。
いやいや、違うんですけど。
と思いながら、顔は笑ってしまう。
この高い高い、めちゃくちゃおもしろい!
あー、赤ちゃん最高!
ミルクのことはすっかり忘れている。
メダカの子は、どうしたら大人になるのと、母に聞きました。
体が大きくなったらかな。
じゃあ、心は? 心はどれくらい大きくなったら?
母は水辺から見える太陽を眺めながら、
心は小さくなるかもね、いまのあなたのほうがきっと母さんより大きいよ。と答えました。
心が小さくなるってどういうこと?
隠れて!
鳥がやってきたので、母と子は水草の中に逃げました。
水草の間からこぼれる木漏れ日を、なんてきれいなんだうとメダカの子は思っていました。
放課後のわたしの日課は、焼却炉のそばにやってくる猫に餌をやることだ。
その日はその日課に先客がいた。
名札の色が違うから、先輩だと思う。
この子、あなたの猫?
別にわたしのってわけじゃ……
そうなんだね。この子に、これ着けていい?
先輩はおもむろに小さなスカーフを取り出した。
え、ああ、はい。
これ、彼氏からもらったの。別れたけど。本当は燃やそうと思ってたんだけど、踏ん切りがつかなくて。
独り言のようにそう言って、先輩は猫にスカーフを着けた。
「かわいい!」という声がふたり揃った。
猫は、にゃあと甘えた声を出した。
カーテン閉めてと息子に言うが、彼の耳には届いていない。
ねえ、カーテン閉めてー
もう一度聞こえるように言ってみる。
いま、星を見てるから。
曇り空だけど。とは言わずにおいた。
彼には見えているのだろう。
それがわたしにはうらやましい。