yuhi

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10/10/2022, 10:29:54 PM

彼女の目から、水色の涙がこぼれている。

ぼくは何かを言おうと思ったけれど、ぐっと我慢した。

水色の涙がこぼれるときは、理由を聞かないで。

そう言われていたから。

ぼくはただ、彼女のそばにいる。

10/9/2022, 11:37:46 AM

こころ、踊るって!

え、こころ踊るの?

こころちゃん、踊るってさ!

こころん、踊るって本当?

心が踊るという噂は瞬く間に広まった。
心が踊ると何かが起こる。
そんな噂を心は知らない。

こころさんが踊ると何が起こるんだっけ?

え? そういえばなんだっけ?

わかんないけど、わくわくするよね、こころが踊ると。

そんな話を心は知らない。

だけどもう、みんなの心は踊っている。

10/8/2022, 10:42:43 PM

朝寝坊をしたわたしは慌てている。

「ごめん、ごはんいらない!」

と父に言うと、父は「まあ、ゆっくりしていきなよ」と優雅なことを言う。

「ゆっくりしてたら間に合わないよ!」

「どうせ間に合わないんだから、ゆっくりするんだよ。お父さんも遅刻確定だ」

父はコーヒーを片手に笑っている。
なんだか力が抜けてしまって、わたしもごはんを食べることにした。

「お父さんは、今日は景色もちゃんと味わおうと思ってる。いつもなにも見てないからな」

「でも遅刻して怒られるんでしょ?」

「今から慌てて行っても怒られる。だからたまには優雅に出勤してみようと思う」

なんだかわからないが、そんな日があってもいいような気がした。

10/7/2022, 11:14:35 AM

マラソン大会でいつも2位の少年は、今年こそはと力を込めてスターラインに立っている。その隣にいつも最下位の少年がいる。2位の少年は声をかけた。

きみはマラソン、楽しいの?

最下位の少年はニコッと笑い、楽しいよ。と答えた。

いったい何が楽しいの?

答えを号砲がかき消した。

*

あのとき、ぼくは最下位の子と一緒に走ったんです。答えが気になって。はじめは遅くてもどかしかったんですけど、だんだんわかってきて。勝つとか負けるとかじゃくて、ただただ、走ってることが楽しいんだって。

大人になった2位の少年は、はじめて優勝した。

10/6/2022, 10:33:34 PM

五本並んだ電線に、鳥が一羽、一羽とやってくる。

ドドドレミファソ……

音符になった鳥たちが歌うのは、あの日の母の歌だった。

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