川柳えむ

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9/12/2023, 8:18:36 PM

「愛してるよ」
「ありがとうございます。私も愛しています」

 まるで模範解答のような返事。
 そう。模範解答なのだ。君の答えは。
 これは私の一方的な想いなのだ。

「ずっと一緒にいてくれ」
「はい。いつまでも一緒にいます」

 君の言葉に嘘などない。本当に最期の時までいてくれるに違いない。それはわかっている。
 けれど、そんなじゃない。君の本当の心が欲しいのに。きっとそれは叶わない。

「本気なんだ」

 私の愛の言葉にも、それ以外の言葉でも、ニコニコと笑顔を絶やさない。
 私の願いは何でも叶えてくれる。それでも、きっと本当の願いは叶えてくれない。
 美しい、誰よりも素晴らしい、アンドロイドの君。
 君は私の想いに答えてくれても、きっと本当の意味では応えてくれない。
 私のこの本気の恋は、きっと叶わない。


『本気の恋』

9/11/2023, 9:27:53 PM

 毎日めくる。その日を待ち侘びながら。
 日めくりカレンダーの、その日には、既にハナマルをつけてある。
 その日付を見るだけで思わずニコニコと頬が緩んでしまう。

 そして、ようやくやって来た。
 たくさんの愛を込めて、念入りに準備した。
 お誕生日おめでとう。生まれてくれてありがとう。出逢ってくれてありがとう。
 今日は特別な日。大切なあなたの誕生日。


『カレンダー』

9/10/2023, 11:01:33 PM

 大切なものを失った。
 心に大きな穴が空いて、代わりに大きな喪失感がある。
 どうしてなくなってしまったのか。誰の手にも触れられないように、大事にしまっておくべきだった。
 そうすれば、こんなことにはならなかった。
 きっとそれは火に包まれて、天へと消えてしまった。

 私が生み出し、捨てられてしまった、人生で一番の最高傑作の絵。
 あれ以来、命を削る程のものを生み出せてはいない。もっと天に向けて精進しなければいけないのに。


『喪失感』

9/9/2023, 10:43:43 PM

 ここに今生まれた。
 たった一つ。世界に一つだけ。
 私が紡ぐ物語。


『世界に一つだけ』

9/8/2023, 10:27:43 PM

 君に出会ったあの日から、僕の胸の鼓動は高鳴りっぱなしだ。
 君と話して、君とデートに漕ぎ着けて、君に告白して、鼓動はうるさいほどに鳴り続けている。
 この胸の鼓動は、君と幸せでいることの証。

 ――ドクン、ドクン……。

 このうるさいほどの胸の鼓動。きっといつまでも鳴り止まない。

「――!」

 遠くから僕の名を呼ぶ、君の声が聞こえた。

「息を吹き返しました!」

 目を開くと、白い服を着た知らない人達が僕を取り囲んでいた。
 少し奥の方から、君が飛び出てきた。

「良かった! 生きてて良かった!」

 その言葉で記憶が甦った。僕は事故に遭ったのだ。

 僕のことを想っていてくれた君を想うと、鼓動は更に早くなる。
 君がいる。それだけで、僕は生きていける。
 大丈夫。君さえいれば、胸の鼓動が鳴り止むことはないんだ。


『胸の鼓動』

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