「愛してるよ」
「ありがとうございます。私も愛しています」
まるで模範解答のような返事。
そう。模範解答なのだ。君の答えは。
これは私の一方的な想いなのだ。
「ずっと一緒にいてくれ」
「はい。いつまでも一緒にいます」
君の言葉に嘘などない。本当に最期の時までいてくれるに違いない。それはわかっている。
けれど、そんなじゃない。君の本当の心が欲しいのに。きっとそれは叶わない。
「本気なんだ」
私の愛の言葉にも、それ以外の言葉でも、ニコニコと笑顔を絶やさない。
私の願いは何でも叶えてくれる。それでも、きっと本当の願いは叶えてくれない。
美しい、誰よりも素晴らしい、アンドロイドの君。
君は私の想いに答えてくれても、きっと本当の意味では応えてくれない。
私のこの本気の恋は、きっと叶わない。
『本気の恋』
毎日めくる。その日を待ち侘びながら。
日めくりカレンダーの、その日には、既にハナマルをつけてある。
その日付を見るだけで思わずニコニコと頬が緩んでしまう。
そして、ようやくやって来た。
たくさんの愛を込めて、念入りに準備した。
お誕生日おめでとう。生まれてくれてありがとう。出逢ってくれてありがとう。
今日は特別な日。大切なあなたの誕生日。
『カレンダー』
大切なものを失った。
心に大きな穴が空いて、代わりに大きな喪失感がある。
どうしてなくなってしまったのか。誰の手にも触れられないように、大事にしまっておくべきだった。
そうすれば、こんなことにはならなかった。
きっとそれは火に包まれて、天へと消えてしまった。
私が生み出し、捨てられてしまった、人生で一番の最高傑作の絵。
あれ以来、命を削る程のものを生み出せてはいない。もっと天に向けて精進しなければいけないのに。
『喪失感』
ここに今生まれた。
たった一つ。世界に一つだけ。
私が紡ぐ物語。
『世界に一つだけ』
君に出会ったあの日から、僕の胸の鼓動は高鳴りっぱなしだ。
君と話して、君とデートに漕ぎ着けて、君に告白して、鼓動はうるさいほどに鳴り続けている。
この胸の鼓動は、君と幸せでいることの証。
――ドクン、ドクン……。
このうるさいほどの胸の鼓動。きっといつまでも鳴り止まない。
「――!」
遠くから僕の名を呼ぶ、君の声が聞こえた。
「息を吹き返しました!」
目を開くと、白い服を着た知らない人達が僕を取り囲んでいた。
少し奥の方から、君が飛び出てきた。
「良かった! 生きてて良かった!」
その言葉で記憶が甦った。僕は事故に遭ったのだ。
僕のことを想っていてくれた君を想うと、鼓動は更に早くなる。
君がいる。それだけで、僕は生きていける。
大丈夫。君さえいれば、胸の鼓動が鳴り止むことはないんだ。
『胸の鼓動』