夏の終わり頃
君と最後の海岸デート
僕が贈った麦わら帽子から
太陽にも負けない眩い笑顔を覗かせる君は
相も変わらず小麦色の肌に沢山の絆創膏をしている
そんなヤンチャな所も好きだけれど、好きな子が怪我をする度
僕は胸が痛むという事を
知っていて欲しいな
君を忘れないように
君に忘れられないように
今日だけで何百枚も写真を撮った
写真の中の君は
相も変わらず透けている
『次は──終点、終点───』
真夜中
僕は今夜も終電で家路を辿る
人の居ない寂しい車内
窓越しに見つめる
燦然と輝くネオンの街は
僕にはとても眩しくて
飲み込まれてしまいそうだ
こうやって今夜も
夜に沈んでいく
『お足元にお気を付けて────』
翼の折れた小鳥を拾った
鳥籠の中で大切に育てて
その翼は完治した
僕はその小鳥を、空に返すべきだと考えた
籠の中で、外の世界を知らないまま一生を過ごすなんて
僕ならそんな人生、嫌だと思ったから。
どんな生き物にも、自由に生きる権利がある
そうして小鳥が飛び立ってから数日後
家の近くの森で、息絶えている小鳥を見つけた
きっと自分より大きな生き物に襲われてしまったのだろう
僕は、どうするのが正解だったのか
今でも分からない
"友情"
関係性が深い非親族相手である"友だち"と呼ばれる人間関係間の感情、思いやる心のこと。 友同士の間に生まれる情愛。
それなら、俺のこいつに向けた感情は、友情ではないのだろう
「泊めてくれてありがとなー!さすが俺の親友!」
「次はないからな。そろそろ遊びは控えろ」
顔が整っていて女性の扱いが上手いから、よくモテる。
だが女遊びの激しい奴で、もう10年の付き合いになる俺でも、長続きしている所を見た事がない。
「わかってるって。あ、風呂借りるね」
「…好きにしろ」
今回のように浮気がバレて、俺の部屋に泊まりたいとせがんでくるのも初めてではない。俺がどんな気でいるかも知らないで…ほんと呑気な奴だ。
「なぁ…お前さ」
「ん?」
「俺のこと、どう思ってるんだ」
俺が柄にもない事を言ったからか、少しの間驚いたように硬直した後、いつもの悪戯な笑みを浮かべた。
「良い奴!かな。こんな俺の事、見放さないでそばに居てくれる、良い"友達"だと思ってるよ」
「…そうか」
知っていた事だ。
今更それを聞いて、落ち込むだとかそんな事は無いけれど。
あぁ、俺はもう手遅れなんだろう。可能性が無いと知っていても、こいつの中で少しでも特別な存在という立場を手放せない。
「……ところで、お前は彼女とかできた?」
「知ってるだろ、俺は興味が無いんだ」
「あぁ、そうだろうね。君はぜひそのままで居てくれよ」
「言われなくても。」
***
俺が君に抱いている感情は、友情なんて健全なものじゃない
でも、もう手放せないんだ