『今日にさよなら』
「いらない。全部いらない。」
がしゃがしゃと棚の中の物を捨てていく。
『そんなに捨ててどうするの?』
心の中の私が囁く。
「いらないの。全部。あの人との物は。」
『ふうん。そっか。そんなことより、
外を見てみなよ。綺麗だよ。』
気がつけば夜が明けていた。
空が白み始め、また新しい陽が昇る。
今日にさよなら。
明日にこんにちは。
『明日って、「明るい日」って書くよね。』
『お気に入り』
お気に入りの青色のワンピースに灰色の靴。
いつもよりちょっぴりおめかしをして
友達の家へ行く。
今日は特別な日。
「「ハッピーバースデー!」」
私の誕生日。
『10年後の私から届いた手紙』
私へ
いきなり手紙なんて送ってごめんね。私は10年後のあなたです。信じられないかもだけど、信じて。
未来は楽しいよ〜
私はね、あなたの10年先で素敵な旦那さんを見つけて、可愛い子どももできて。毎日が幸せです。
だからね、生きて。命を絶とうだなんて思わないで。今はまだ、辛いことばっかりかもだけど。
苦しいのも、辛いのも、ぜーんぶ乗り越えて、未来で私は生きてます。
みーんな、未来で待ってる。
生きてね。
私より
『バレンタイン』
だれかがだれかの幸せや
笑顔を願って
プレゼントを選ぶ日。
だれかの微笑む顔を見たくて
一生懸命台所で奮闘する日。
1年の内で普段より、素敵な日。
『待ってて』
バレンタイン。それは、私たち学生のイベント。
校内もいつもより浮足立っている。
目を光らせる先生、誰に渡す?と話す女子たち。
毎年恒例の風景であった。
私はというと想いを寄せる男子に「待ってて」なんて言ったのに、行けない。
扉を開ければすぐそこなのに。
開けれない。行けないよ。
扉一枚隔てた先から、チョコを渡す声と、嬉しそうに返事をする彼の声が聞こえるから。
何年もあたためた心と、彼のためと作ったチョコレートは、鈍い音を立てて割れた。