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『待ってて』


バレンタイン。それは、私たち学生のイベント。
校内もいつもより浮足立っている。 

目を光らせる先生、誰に渡す?と話す女子たち。
毎年恒例の風景であった。

私はというと想いを寄せる男子に「待ってて」なんて言ったのに、行けない。

扉を開ければすぐそこなのに。
開けれない。行けないよ。

扉一枚隔てた先から、チョコを渡す声と、嬉しそうに返事をする彼の声が聞こえるから。




何年もあたためた心と、彼のためと作ったチョコレートは、鈍い音を立てて割れた。

2/13/2024, 10:02:58 PM