『好き』とか『愛してる』とかが分からなかった。
でも今日、知ってしまったかも。
偶然出逢った人だけど、凄く心惹かれた。
これが、『好き』なのか。
自分は、その人と付き合った。
そしたら自然と『愛してる』と思うようになった。
これが『愛情』か。
人は、無知だ。どんな生物も無知から始まる。
でも、こうやって理解していくものなのだろう。
それだけでも凄いなと思った。
#愛情
子猫が居た。隣家の庭の中で寝ている。
真っ黒な猫で、以前にも同じような猫を見たことがあるので、恐らくその子が親猫だろう。
動物はあまり好かないが、(懐かれないので)悪くはないかもしれない。
子猫って意外と大きいんだなぁ。もう少し小さいのかと思ってた。そんな風に惘惘と考えていると、不意に時間が気になった。あ、仕事いかなくちゃ。
そんな朝。
#子猫
杜若色の髪飾りを着けた少女が居た。
真っ黒の長髪で、月光のような白のフリルが付いた服をきていた。
それこそ小説に出てくるような少女だった。
小路を歩く。葉桜が舞っていた。
綺麗だな、それしか言えない程、綺麗だった。
また、会いたいな。
今は何処にいるのか分からないけど、それでいい。
『また、会いましょうね』
昔聞いた少女の声。
少し曖昧だが、記憶の割には鮮明だ。
懐かしい。
また、会いたい、な。
#また会いましょう
真赤の星が輝いている。青い地球を照らし続ける真赤な太陽。常からその恩恵を傍受して生きている私たちは、その星に今日も感謝しなくてはならない。
宗教というものに関しては実に疎いのだが、これ位の感謝は当たり前だと思っている。母親がそんな人だったからだろうな。今はもう分かりやしないが。
黄昏時とも云うこの時間帯は、私にとって特別なのだ。私が私でいられる時。
私は幼い頃からの夢がある。今はもう半ば諦めているのだが。それは母親みたいな人になるという夢。
でも私ではあの人みたいにはなれない。私にあの慈悲深さはない。叱るときは叱り、褒めるときは褒める、といったものがまるでないのだ。
私では駄目なのだ。八年間の想いで構築された翼は何の意味も持たなかった。羽ばたけない翼など意味はない。私は飼育委員会だったから、毎日と云っていい程、鶏を見ていた。そんな感じ。莫迦にしている訳ではないのだが、今を伝えるにはそれが一番的確だと思ったからだ。私は情けない。哀れな幼子なのだ。誰にも救えぬ、人間を象った何かなのだ。
この時間になるとマイナス思考になってしまうのは私の悪い癖だ。早く治さないといけないね。そんなことを考えているうちに、日も沈んできた。否、別の場所を照らしにいってしまった。太陽が羨ましいと思った。常に誰かを照らすことができる。私もそんな風になりたかったよ。…縋ってばかりじゃ駄目だ!母親みたいになるなら、もっと……!
そうして今の翼をまた、広げるんだ。そしたら、いつかは、きっと、大、丈夫だ、から…。
お願い お母さん
もう少しだけでも私を見ていてよ
貴方が私の翼だから
黄昏時、又の名を逢魔が時という。
お母さんにだって会えるよね。
#飛べない翼
静かに眠る姫様は、何を想っているのだろう。
異国の王子様?願いを叶える黄金の鐘?幸福を運ぶ色とりどりのオウムたち?
それは姫様にしか分からない。
青い空に輝く星を隠す雲から降る柔らかい雨は、姫様を優しく包む。誰にも害されないように。全てから守るように。
雲のベッドに包まれて、御伽噺の夢を見る。
凡百の幸福を齎す姫様。だからこそ皆が守る。
今日も朝が近づく。
#柔らかい雨