人間未満

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11/24/2024, 11:27:08 AM

パチッ

彼との数センチの間に
起こってしまった電気

二人の距離を
作るように感じてしまった

これだから
セーターは嫌いなんだ

君と別れた
駅のホーム

泣きそうな顔を
セーターの袖で拭った

『○○番線、快速列車が…』

駅のアナウンスが聞こえなくなるまで、

その時まで、

まだ、
あの時の二人だから

彼と迎えた、二度目の誕生日
お気に入りのカフェでデートをした
その帰り道で
プレゼントされたセーター

きっと
終わりだったんだろうな

ヨレヨレになったセーターは
こんな終わりに相応しかった










11/23/2024, 10:20:54 AM

何処か、深い場所に
落ちていく

戻れなくなる

落ちるの反対は
上がるじゃないから

彼処に帰る事はない



『スマホの中の世界は
 かなり不思議な場所だ』

あの子は、
いとも容易く

そう、言い放った

スマホに触った事がないと言うあの子は
流行りの物を知らなかった

『草』ってどういう意味か分かる?

冗談混じりに聞いてみた
すると、あの子は

…意味?
ネガティブな言葉かなぁ
貶す感じの…

そう言った

…。
あの子は
変わった子だったから

『あの世界』の可笑しさに
直ぐに気づいたみたい

あの子が落ちる事は
無いのかもね

今のところは…







11/22/2024, 10:31:57 AM

夫婦の正しい形ってなんだろう

ママもパパも
教えてはくれなかった

だけど
『あい』というものがあれば

二人は夫婦になれるらしい

なら、良かった
『夫婦』には『あい』がある

今は無くとも

昔に
確かな痕がある

今日は
十一月二十二日

365回来る日の
一日である

そして
もう終わる日でもある

今日が
『夫婦』の『あい』が
"あった"日になりませんように

11/21/2024, 11:20:16 AM

「どうすればいいの?」

先生からの問いに
私達は黙り込んだ

先生の、こんなに悲痛な声は
初めて聞いたので

誰も動かず
誰も動けず

ただただ
先生を見ていた

その行動が
先生の追い討ちになると知りながら

何故こうなったのか
漠然と考えていた

「貴女の夢、とっても素敵ね」

「頑張ってね。…私の出来なかった分まで」

「絶対に許せない…」

先生の言葉が
心を覆い尽くして

やるせない気持ちは
飽和状態だった

どうすれば良かっただろう

どうしたとしても

この結末が、最善だった








11/20/2024, 11:38:33 AM

あなたの宝物は何ですか?

そんな問いに
彼はこう答えた

「それはきっと、時間だ」

宝物が時間?

あの時は、
全く意味が分からなかった

今なら、
少しだけ分かる

あの
永遠に続くように感じた時間

儚い物だと気づくには
あまりに遅かったから

…今が永遠のように感じてしまうから

…こんな事をしてるから
終わりが見えなくなるんだ

彼が笑った気がした





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