「どうすればいいの?」
先生からの問いに
私達は黙り込んだ
先生の、こんなに悲痛な声は
初めて聞いたので
誰も動かず
誰も動けず
ただただ
先生を見ていた
その行動が
先生の追い討ちになると知りながら
何故こうなったのか
漠然と考えていた
「貴女の夢、とっても素敵ね」
「頑張ってね。…私の出来なかった分まで」
「絶対に許せない…」
先生の言葉が
心を覆い尽くして
やるせない気持ちは
飽和状態だった
どうすれば良かっただろう
どうしたとしても
この結末が、最善だった
あなたの宝物は何ですか?
そんな問いに
彼はこう答えた
「それはきっと、時間だ」
宝物が時間?
あの時は、
全く意味が分からなかった
今なら、
少しだけ分かる
あの
永遠に続くように感じた時間
儚い物だと気づくには
あまりに遅かったから
…今が永遠のように感じてしまうから
…こんな事をしてるから
終わりが見えなくなるんだ
彼が笑った気がした
ある日のことだった
君が気まぐれで買ってきた
インテリアのキャンドルが気になって
使わなそうだったから
火をつけてみた
まぁ…昼間は
案の定、炎が見えづらくて
カーテンを閉めて
照明を消したんだ
すると
炎が力強く
存在を主張した
微かな風での靡く様さえ
なんだか綺麗に見えた
それで昔、
君が話していた事を思い出した
「星の光は、昼間は太陽に消されてしまうの」
キャンドルの炎は
太陽に砕かれた心に
小さな星を灯した
大は小を兼ねる
と言いますし
想い出は
多い方がいいのでしょう
亡くなった祖母達に宛てるなら
想い出話は、多い方がいいですからね
思い出と想い出は
たくさんありますが
一番の話を
特別に話します
私が
異世界に行った時の話です
…本当の異世界の話ではありませんよ
そんな風な場所に行った話って事です
辺りは一面の地獄でした
私は、
一心不乱になって何かから逃げていました
暗い暗い路地裏
ふと懐かしく感じる様な場所でした
路地裏の隅で
私は座って休みました
なにせ
数時間も何かから逃げていたんです
とうの昔に
体力は限界を超えていました
ネオンの明かりが
チラチラと
向こうの通りから見えました
其処に逃げたのなら
助かったのかもしれません
たすかりたい
くるしみが
さってほしい
ん?なにかきてる?
のぼるあかりは
おかしいほど
もえていて
いたいほど
でんきをはっしていた
……これが
私の人生最期の想い出です
天使は
面白くなさそうに
私の話を聞いていた
冬になったら
何しよう
こたつに入って
みかんを食べたい
アニメを全部
一気見したい
クリスマスプレゼントは
マフラーを送りたい
冬の名曲
カラオケで歌いたい
おせちは
入れたいのだけ入れたい
雪を集めて
雪兎を作りたい
今年こそ
新年のイベントに行きたい
神社に溢れる
笑顔の人達
家族だったり
友達だったり
皆、楽しそうだ
お正月の願い事、決めた!
あの中の、
笑っている人の一人になれますように