【主と従者(複数形)】
心配しないでください。
貴方は他の誰よりもずっと優れています。
心配しないでください。
周りは貴方に着いていきますし、貴方の言葉を第一に聞きます。
だって貴方は、この場にいる誰よりも偉いお人だから。
貴方と比べれば私たちなんて、”意味が無い”よりも価値がありません。
そうですね、確かにそうです。
同じ顔の人間が数百人いるのは、恐怖心を煽りますよね。でも、大丈夫です。
だってここにいるのは、全て私だから。
いくらでもお使いください、私達の主よ。
【幽霊依存の恋暴走】
昔から、他人には見えない友が居る。
年少に、友が幽霊と呼ばれる事を知った。
年中に、私にしか見えていない事を知った。
年長に、死ぬと友と同じ存在になると知った。
小学生になる頃には、友の存在を隠すようになった。
私だけが知る、私の一番の理解者。
そんな友を、手放したく無いと幼心なりに出した欲望だった。
大人になっても、友が見えなくなることは無かった。
私が辛い時、哀しい時、苦しい時。そのどれにも寄り添い私を励ましてくれた。
そんな存在を■したいと思う様になったのは、魔法使いになってしまった焦りからだろうか?
しかし、そう思った理由はどうでもいいのだ。問題は手段なのだから。
厚い薄い本の世界では無いのだから、手の出しようが無い。そう考えていたが、この問題の解決方法を、何も知らぬ友が教えてくれた。
つまり、入れ物があればいいのだ。
その程度は容易い。ネットで原寸大で駆動、表情変化可能のそれ用の人形を購入し、差し出した。
友は女性の人形であることに文句を言っていたが、数十年ぶりの実体に喜びの笑みを人形の顔に浮かべている。
その表情を見て私は、友を押し倒した。
*
朝。人形の中に友は居らず、周りにも居なかった。
ずっと隣にいると、思っていたのに。
その日以降、友を見ることが無かった私は、友を追って同じ死を迎えた。
【無い無い命、魂一つ】
欲しいって言われても、無理な物は無理だよ。
君にはもう、手に入らない。ないものねだりは赤子でもしないから。
全うしたじゃないか、人生を。
あの地獄のような現世で老衰死なんて、寧ろ充実した人生とも言えるよ?
なのに、またあの世界に戻りたいと?
そう言っても、命は魂に十個まで。君は覚えてないかもしれないけれど、もう十個の人生を送った後なんだよ。十以上はアンデット系になって上々な煉獄なんだから。
君の善じゃあ、ボクら天使にもなれないんだから。大人しく、この川で地獄の手伝いをしながら自然消滅を待ってよ。
【好きが原動力】
アイツはいつも、横にいる。
言葉で、力で、性別で、複数で。
ありとあらゆる術で彼女を傷つけるのに、手放そうとすらしない。
アイツは、彼女のことは好きじゃない。
アレはただ、嫌っている人間が支配下にいないと駄々をこねる子供だ。
だけど、近づくことすら出来ない。
幾ら子供でも、グレネードや剣を投げ回している状態なら、大人でも手がつけられないどころか死につながる。
⸺だから、一番始めに権力を落としたわ。先祖の功績に縋りついている事を隠して、威張るだけ。この手の手合いは、蹴落とすに限る。
その次に、数。権力から来ている数は、直ぐに離れたけど、何人かは力に捕まっていたから、数の絶対数を減らしたわ。ちょっと大仕事になっちゃったけど、全部アイツの罪になるよう工作したから、張り切っちゃった。
最後に、言葉と性別。言葉は一点で済んだけど、性別だけは元々の構造上そう簡単に変わるものでも無い……なら、気だけでも変えてしまおう。そう考えたから、切ってあげたの。切ったのは、捨てる予定のミキサーにかけてあげたわ、目の前で。
全部無くなったアイツは、とても惨めになったの。お可愛いことですね。
彼女は心の底から笑ってくれたわ。だって彼女、自分の上に立っていた者が蹴落とされて這いつくばる様子が大好きなんだもの。
私は彼女のこと好きよ。好きじゃなかったら、人間に関わっていないもの。
「ありがとう、悪魔ちゃん」
礼を言われる程、凄くもないわ。好きにやってるだけだもの。
【涙の星】
彼女の涙は星となる。
泣いた数だけ星が生まれる。
けれど彼女は泣き虫だ。
人と話すだけで涙を流す。
だから、この世に星は際限無く生まれ、資源は豊富。
人には過ぎた星が溢れている。