「秋の訪れ」
日が短くなった。
気が付けば、辺りは真っ暗だ。
秋の日はつるべ落とし。
淀み無く清々しき空気、天高く美しき青空。
ほうき雲が真っ青なキャンバスに、白い筆跡を残す。
そうして深まりゆく秋には、郷愁と旅情が綯い交ぜとなり、寂寥を運ぶ。
真っ暗な夜空に、ぽっかりと浮かぶ美しい月。添う星々は、瞬きは少なに、輝きを増す。
草木の烟る匂い。
焚き火に燻され、爆ぜる音。
遠くラッパの音が、季節と風物の到来を告げる。
「モノクロ」
白と黒で構成されたもの。
モノクロ。
初めてその言葉に触れ、目にし、認識したのは、祖父母の写真。
祖父は、新しい物が大好きで、最愛の妻が何よりも大切だった。
祖母は、昔語りが大好きで、妖怪や教訓譚を良く語ってくれた。
次いで、白と黒の動物たち。
犬、うさぎ、猫、パンダ、モルモット…。
みな愛らしくて、愛おしい。
今では、空飛ぶ豆大福が大好きで、ここ数年どっぷりとハマっている。
実物を見たことはないけれど、いつか出会えたら良いなぁとぼんやりと願っている。
「涙の理由」
心が動く。
前触れ無く溢れる。
周りに釣られる。
人目を憚らず。大きな声で。
人知れず。声もなく。
ただ流れるだけの、透明なもの。
膨張し、紅い湖を作るもの。
理由なんて、大したものなんてなくって良い。
大人だからダメなんて事もない。
人間が、人間らしく生きる為に、必要な機構なのだから。
【コーヒーが冷めない内に】
コーヒーの香りは好きなのに、苦くて飲めないと言うあなた。
ブラックばかりがコーヒーではないと、カフェオレを淹れたり、カフェモカにしてみたり、とアレンジをし続ける。
もちろん、あなたが好きな紅茶や緑茶も外さない。
甘さやミルクの量を変えていく内に、コーヒーの苦味が気にならなくなって来たようで、時々はブラックを口にするようになった。
「…慣れって怖いな。」
ぽつりと零れた独り言は、照れ隠しのよう。
「一緒に同じのが飲めるの、オレは嬉しいよ。…嫌だった?」
ぶんぶんっと首を横に振って、驚いた顔でこちらを振り向くあなたが愛おしくて、思わず抱き締めた。
【僕と一緒に】
「かっちゃん、一緒に行こう。」
登園、登校、通勤、お出掛け…。
色んな移動の時に、あなたがかけてくれる声が、大好きだ。
「カズ…?一緒に行こう。」
当たり前に声を掛けてくれる事に慣れないように、時々は自分から声を掛けるようにしてみたり。
「うん!一緒に行こう!」
準備、火の元確認、戸締まり、忘れ物ないかな…。手分けして確認しながら、家を出て行く。
帰りも一緒になったら良いのに。