たろ

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7/31/2025, 11:45:18 AM


《眩しくて》

緩やかに差し込む陽射しは、自然そのもの。
漆黒の闇をゆっくりと白ませながら、夜から朝へとカーテンを開くように少しずつ明るくなっていく。
(あぁ、朝が…。)
すわ、漆黒の闇夜に呑み込まれるのではと、恐れ慄く身体の強張りが緩んでいく。
夜は塗籠の中で眠るのだと教えられたが、閉鎖された真っ暗闇に動悸が止まらず、教えに反して広々とした床の上で身を縮こませて眠っていた。

空が白んで来るのを待って、もぞもぞと掛布を被ったまま縁側にまろび出る。
空気が澄んでいて、心地よい。
いまだ、宵闇にも慣れない自分の眼には、朝日が染み入る程に眩しい。
(うぅ、眩しい…。)
もう少しだけ、人気のない縁側で微睡む。
(慣らさないと…。)
逸る気持ちを抑えつつ、少しずつ庭先に視線を寄せて、明るさに慣れようとする。

起床時間までは、まだもう少し余裕があるはずだ。

7/28/2025, 10:22:36 AM


虹のはじまりを探して

7/27/2025, 12:34:57 PM


【どこへ行こう】

あなたと一緒なら、どこへだって行ける。
あなたと一緒なら、どこだってステキな場所。

買い物に行くいつものスーパーマーケットだって、なかなか入りにくい雑貨屋さんだって、見知らぬ土地だって、きっとステキな思い出になる。

家のベランダで星空を眺めてたって、あなたと一緒ならロマンチックでドキドキする。
星空を嬉しそうに眺めるあなたの横顔を盗み見ていて、怒られるまでがセットだ。

「で、どこ行こっか?」
何処でも良いよ、と言いたいのを飲み込んで、いくつか提示された中から吟味する。
「どこも良い場所だからなぁ、迷う…。」
本当に迷っている。あなたが考えるプランは、いつだって痒いところに手が届くほど完璧。
「完璧なプラン過ぎて、全部行きたい…。」
ニヤリとあなたが笑った。
「っしゃ!全部行こ!踏破するよ!」
あなたのガッツポーズを見て、呆気に取られたまま、小さく頷いた。
(全部載せ、アリなんだ…。)
嬉しさが爆発して、小躍りしているあなたの背中を呆然と見詰める。

きっとステキなホリデーになるに違いない。

7/26/2025, 10:12:11 AM


【涙の跡】

『待って!行かないで!』
声が出なくて苦しい。動かない重たい体。
あぁ、これは夢だ。

「かっちゃん、目開けよう。開けられそ?」
聴こえてくる聴き慣れた声に、急浮上する意識。
「―――っ!」
息が詰まって、上手く呼吸が出来ない。
上半身だけ起き上がって、重い目蓋が急に開いた。
「おかえり。嫌なモノでも見た?忘れちゃえるなら、置いてきて構わないけど。持って帰っちゃったなら、全部吐き出しちゃお。」
宥めるように背中を擦る温かい手に、安堵が押し寄せる。
「カズ…。居なくなったかと、思った。」
どうにもぼやける視界が鮮明になったかと思ったら、目尻から水がぽたぽたと落ちてきた。
「おや?カズくんは、此処にいますよ。」
背中を擦っていた手が、ぽんぽんとあやす様に背中を叩く。
温かい身体がするりと入ってきて、ぎゅうと抱き締められる。
「何処にも行かないよ。もう、大丈夫。」
頬に残る涙の跡を温かい手が拭って、額に乾いた唇が触れる。
「かっちゃんが戻って来れなくなったら、かっちゃんを呼ぶね。たがら、戻って来て?」
抱き締めてくれる温かい身体を抱き締め返して、ゆっくりと鳴る相手の心拍を聴きながら、深呼吸する。
「うん…。ありがとう。」
早鐘を打っていた自分の心臓が、静かになっていく。

7/24/2025, 10:27:18 AM


もしも過去へ行けるなら

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