※閲覧注意※
IF歴史?
軽率なクロスオーバー?
すぐ泣き真似してぐずる悪い大人が居るよ。
あと、普通に絡まれるモブちゃんが居るよ。
何でも許せる人向け。
《言葉にできない》
声が出ない。
その状況に慣れるまでは、ひたすらに戸惑い、意気消沈し、咽び泣いた。
鬱々とした日々を暫く過ごして、漸く諦めも付いた頃、さめざめと泣きながら繰り返した手習いの筆談で、何とか意志疎通が図れるようになってきた。
(…呆れた。)
眼前でさめざめと泣く振りをする銀色の髪が、嗚咽のようにフワフワと震えていた。
「引き留めて下さいと、お伝えしたではありませんか。どうして、引き留めて下さらないのです。」
引き留める力など、持ち合わせていないし、まず頼まれた憶えがない。
(勝手な事ばかり言って…。)
眼の前の人は、いつも自分を責め立てては、さめざめと泣く振りをする。
「…来い、暁。」
簾越しに声がしたので、立ち上がって声の方へ向かおうとすると、袖を踏まれて後ろへ引っくり返り、身動きが取れなくなる。
「お待ち下さい。御用向きならば、私が。」
するりと簾の向こうに出て行く銀色の髪を茫然と見送って、慌ててその背中を追い掛けた。
「退け。俺は、暁に用がある。」
同じ銀色の髪が、紫水晶の色の双眸が、似通った背丈が、眼の前に2人分。
「退きません。私は、あなたに用があります。」
険呑な雰囲気がふたりの間に流れる。
「今日こそは、お付き合い頂きますからね。お覚悟を。」
雰囲気に呑まれた足が竦んで、身動きが取れない。そこに、言葉が伝わらない人を挟んで、自分を呼んだ人が向こう側に居るので、ふたりを遠巻きに眺めるしか無かった。
(ドッペルゲンガー?いやいや、双子?)
悪戯好きな狐や狸が、人真似の為に化けたのかと思う程そっくりな見た目に、絶句した。
『そっくりさん、かな?』
間違いなく喚ばれた筈なのに、蚊帳の外に放り出された様な気がして、眼の前のそっくりな2人を茫然と観察する。
『いやいや、現実逃避しちゃ駄目だから!』
静かに言い争う様なやりとりがあって、ふたりの背中が庭先に降りて行くと、突然手合わせが始まった。
激しく剣戟を交わす音が響く。
驚き過ぎて、目を白黒とさせていると、カクンと膝が折れた。
(な、何これ。怖い怖い怖い。)
階段の傍にある擬宝珠に縋り付いて、恐怖に竦んで震える体をかろうじて支えた。
「春爛漫」
満開の花、花、花。
様々に咲き乱れる様子は、まるで百華繚乱。
爛漫に燦めく、耀くばかりの春がある。
咲き誇る花々を慈しんでは、美酒を片手に愛でる贅沢たるや。
忙しなく降り頻るは、桜の花弁。
駆け足の春を追って、人の波は右往左往するようだった。
散り行く花を見送れば、萌木が若芽を纏って、新緑の柔らかな緑に心癒される。
誰よりも、ずっと
【これからも、ずっと】
今までと、これからと。
どちらも、ずっと。
だから、これからも、ずっと。
「一緒がいい。離れないし、離れたくない。本当は、全部まとめて、ひとつになれたら良い。」
ふたりの変わらない願いが、これからもずっとふたりの間にあります様に。
【沈む夕日】
「海が見たい。…海に沈む夕日が見たい。」
焦点の合わない虚ろな黒い瞳が、ぼんやりと壁を凝視したままで、口元からはポツリと独白の様な呟きが零れ落ちた。
「うん。ちょっと行ってくる。かっちゃんは、どうする?」
ふたつ返事で、同行すると決めた。
お出かけ日和の昼下がりに、軽食と軽い着替えを乗せた車を出して、ふたりで海を目指した。
休憩の為に立ち寄ったサービスエリア。
「見たいと思ってた?ただ、出掛けたかった?」
急な思い付きもままあるが、あまり突拍子もない事をするタイプでは無いと思っていたので、確認したかった。
「ん?急に思い付いただけだよ。見たいなぁって思ったら、居ても立っても居られなくてさ。天気も良いし、すぐ行こう!って。」
体良く誤魔化したつもりなのだろう。
「…こないだのドラマ、綺麗な夕日が海に沈んでったもんな。」
ゴホッと咽るあなたを尻目に、くすりと笑う。
「うわぁ、キレイ…。」
海に沈む夕日を見届けて、美しい夕暮れを堪能した。