たろ

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【沈む夕日】

「海が見たい。…海に沈む夕日が見たい。」
焦点の合わない虚ろな黒い瞳が、ぼんやりと壁を凝視したままで、口元からはポツリと独白の様な呟きが零れ落ちた。
「うん。ちょっと行ってくる。かっちゃんは、どうする?」
ふたつ返事で、同行すると決めた。

お出かけ日和の昼下がりに、軽食と軽い着替えを乗せた車を出して、ふたりで海を目指した。

休憩の為に立ち寄ったサービスエリア。
「見たいと思ってた?ただ、出掛けたかった?」
急な思い付きもままあるが、あまり突拍子もない事をするタイプでは無いと思っていたので、確認したかった。
「ん?急に思い付いただけだよ。見たいなぁって思ったら、居ても立っても居られなくてさ。天気も良いし、すぐ行こう!って。」
体良く誤魔化したつもりなのだろう。
「…こないだのドラマ、綺麗な夕日が海に沈んでったもんな。」
ゴホッと咽るあなたを尻目に、くすりと笑う。

「うわぁ、キレイ…。」
海に沈む夕日を見届けて、美しい夕暮れを堪能した。

4/7/2024, 2:15:08 PM