【平穏な日常】
陽だまりのような温もりと、木洩れ日の下の涼やかさに、似た穏やかさが溢れている。
「幸せだなぁ。」
独りで寂しい想いもせず、大好きなあなたと一緒に居られて、心穏やかに過ごせる。
「しあわせ?今、カズくんは幸せなの?」
隣に居るあなたが、嬉しそうに尋ねる。
「ぼかぁ、しあわせだなぁ。」
往年の名優が呟いた台詞を、真似てみた。
「…幸せなら、良かった。」
あなたは、ピンと来ない様だけれど、嬉しそうに微笑んでくれる。
「かっちゃんが居てくれたら、それだけでいいんだ。」
あなたとふたり、平穏な日々が過ごせたら、それだけでもう幸せ。
【愛と平和】
あなたには、いつだって敵わないと思う。
不意に携帯電話が鳴動する。
画面には、あなたを示す表記。
『お肉食べたくて、お肉屋さん来てる。いつものタレに漬けてあるヤツ、どっちが好きとかある?あ、今日のオススメは塩レモン!』
あなたの声が聴こえてきて、無条件で嬉しくなる。
「両方好き。タンなら塩だけど、味噌も美味しいから。嫌いなものはないなぁ。塩レモンも美味しそう。」
朝の挨拶や会話で判るのか、あなたはきっと何かを察したのだろう。
『解った。腹ペコで、早めに帰ってきて。焼き肉パーティするから。焼いて待ってる!』
今日のスケジュールを再確認して、帰れそうな時間を伝える。
「帰る前に、また連絡する。ありがとう。」
あなたには、何でも見透かされていて、本当に敵わない。
「カズくんから、連絡があったのか。うん、早く帰らないとだな。必ず、定時で上がるぞ。そして、私も一緒に帰る。…我が家の夕食が同じでも、構わんだろうか?」
スケジュール管理をしてくれている人に報告すると、ふたつ返事で了承して貰えた。
帰りを待つあなたの為にも、絶対に帰るのだと決意も新たに、午後の仕事に取り掛かる。
【過ぎ去った日々】
過ぎ去りし日々よ。
幸せな思い出も悲しく辛い思い出も、少しずつ褪せて行くものと言われている。
時薬、時間が解決してくれる等と人は簡単に言うけれど、そんな都合の良い事は、ない。
魘される声で目が醒める。
隣で眠るあなたが、顔をしかめて身を固くしている。
「かっちゃん、起きて。戻っておいで。」
強張る体を抱えて背中を擦っていると、強張った腕がぎゅうぎゅうと縋ってくる。
「…カズ、ごめん。ありがとう。」
縋る腕は、落ち着くと弛んで離れていく。荒い息もゆっくりになっていく。
「大丈夫、大丈夫だから。」
忘れたいのに忘れられない。
それでも藻搔いて、忘れようとする。
そんな繰り返しを、ふたりで宥め合い、歩んできた。
これからも、ずっと。
【お金より大事なもの】
お金より大事なものは何か、と訊かれてあなたは何と答えるのだろう。
「え?かっちゃん。」
尋ねれば、即答する自分の呼び名。
「これって、無人島に行くなら何を持って行く?みたいな質問?」
訊き返したいと書いてある表情に、苦笑いして首を横に振る。
「お金で買えないものがたくさんあって、決められなくて。で、訊きたかっただけ。」
あなたの事はもちろん大切だけれど、お金で買えないものは他にもたくさんある。
「でも、カズくんの答え聴いて、同じだなって思った。」
人との縁、思い出、命、存在、愛情、心。
自分の周りは、大切なもので溢れている。
「えへへ、お揃い、嬉しいなぁ。」
照れ笑いのあなたが愛おしくて、そっと抱き締めた。
月も星も大好きです!
ロマンがありますよね!←
『月夜』
空にプカリと浮かぶのは、少し太ましい三日月型のお月さま。
まるで夜の闇を渡る一艘の船。
あなたが好きなお月さまの形。
月影は清かに、月が渡り行くのを静かに見守る星たち。
暗い夜道をささやかに照らし、瞬く星々の邪魔をしない穏やかな光。
それは、密やかなる想いを、孤独や心の傷を、優しく包む様だとあなたは云う。
月は満月に限ると思っていた自分も、あなたの影響を受けたのか、三日月も良いと思うようになっている。
夜空に浮かぶ三日月を見上げて、愛しいあなたを想うのだ。