たろ

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2/13/2024, 12:55:50 PM

【待ってて】

「ちょっと、待って。」
大好きな幼馴染みのあなたが良く口にする待っては、時に恥ずかしかったり、心が追い付かない時の反応だったりもする。
「うん、待つね。」
じっと隣で待っていると、落ち着いたあなたが、ゆっくりと声を掛けてくる。
「―っ、待って。やっぱり、待ってて。」
たまには、時間が掛かることもある。
「うん、大丈夫。待ってるから。」
稀に、逃げられちゃう事もあるけれど、落ち着いたら、こっそり戻って来てくれるのも知っている。
「―――っ。」
最近は、のんびり待つことにして、あまり追い掛け回さない様にしている。

陽だまりと暖かな陽気に誘われて、眠気がおいでおいでと手招きしている。
「…ふわぁ、あふ。」
瞼が仲良ししてしまって、目が開かないなぁ、と思いながら微睡む。
ふわりとブランケットが体に掛かって、人の気配が近づく。
頬を掠める口付けが、そっと唇に落ちた。
「しゃぁわせ、だなぁ…。」
眠たくて堪らなくて、起きたいのに起きられない。
幸せな夢が見られそうだ。

2/12/2024, 10:48:08 AM

※閲覧注意※
IF歴史?
二次創作?
軽率なクロスオーバー?
ごちゃ混ぜバンザイ!
創作モブが普通に居るよ。



《伝えたい》

声が出ない。
気が付いたら、誰にも声を掛けられなくなっていた。
誰も気が付かない。
呼び掛ける声は、空気を少し押す程度で、誰にも伝わらなかった。
「―――っ!」
(どうして?どうやって話してた?喉を痛めて声が出ないんじゃない。)
声が、ないのだ。
(なんで、こんな事に…。)
「何故、ここにお前がいる?」
茫然と座り込んでいると、後頭部から声が降ってきた。
ざりざりと地面を踏む音が近付く。
(なんて説明したら…。だめだ、伝わらないのに、どうしよう。)
地面に指が触れる。はっと思い出して、指で地面をなぞる。
(書いて、見てもらえば…。)
大きめに、ゆっくりと腕を動かす。
「こえが、でない…?」
後ろへ体ごと振り返り、首を縦に振って見せる。
「…巫山戯て居るのか?」
ひゅっと喉が鳴った。見ていたであろう男性の瞳が、至近距離で剣呑に細められている。
竦み上がる身体を叱咤して、首を横に振る。
「あまり、人様をからかうなよ。死ぬぞ。」
ひょいと男性の腕に抱き上げられて、そのまま連れ出されてしまった。

運んでいる間に意識を手放したらしい子どもが、突然に滔々としゃべりだした。
「此の子は、私を預かると約束してくれたから、大切にしておくれ。私を結び付けるのに、此の子の声を使わせてもらった。不便だろうから、あなた達には伝わるようにしよう。意地の悪い事をしたら、相応の報いがあると、そう心得よ。」
己を神だと宣う子どもは、胸を張って得意気である。
「…人が良すぎるのも、考えものだな。」
仕方がないと応える男性に、子どもは怪訝そうに首を傾げた。
「子を護れば、神も護れると言う事ならば、さしたる変わりはない。承知した。」
子どもは嬉しそうに笑って、頼んだ!と言い放ち、それきり脱力して気を失った。
「…唐突だな。」
脱力する体を引き寄せて、再度担ぎ上げる。

ふわりと風が通り抜けて行った。


2/11/2024, 10:20:11 AM

※閲覧注意※
IF歴史?
うっすら二次創作?
クロスオーバー?
ごちゃ混ぜ、創作モブが普通にいる。



《この場所で》

昔々、或る所に―――。
おとぎ話の冒頭部分に良くあるくだり。
優しいお爺さんとお婆さんは出て来ないけれど、何故か新婚さんっぽい若夫婦に拾ってもらって、お手伝いさんみたいな人たちにも良くしてもらって、やっと生きている。

生活習慣は全く異なっていて、馴染むのもひと苦労だ。
七五三以来の着物も、見たことがないシロモノで、何が何だか判らない食べ物も、作法なんて何ひとつ解らない。
自分で身の回りの事をしようとしても、少しも上手く出来なくて、結局すべての面倒を看てもらっている。
緊急事態の時は、どうしたら良いのだろう。
困る事しか思い浮かばない。
ここを去る日が来たら、きっと何も出来なくて困ってしまうだろうなぁと、取り留めなく考えていた。
「考え事かい?難しい面してさ。」
着付けとお風呂の介助をしてくれる女性が、ふと着付ける手を止めて訊ねてくる。
首を横に振って、にっこりと笑ってみせる。
女性は安心したように笑って、着付けを再開した。
(きっと、この場所で生きて行くのだろうな。)
帰る方法も判らないのだ。元いた場所には戻れないと考えるのが妥当だろう。
(出来るだけ早く、馴染まないと。)
頑張ろう、と思えた。

2/10/2024, 12:35:10 PM


【誰もがみんな】


あなたは、誰もがみんな声を掛ける素敵な人。陽だまりのような暖かな人。
どこかに連れ去られそうで、心配になる。
(お願い、何処にも行かないで―――。)
声が喉元までせり上がってくるのを、慌てて飲み下す。

あなたの周りは、いつもたくさんの人で溢れていて、誰もがあなたを好きになる。
あなたは、誰にでも優しくて、嫌な顔ひとつせずに、屈託なく喜怒哀楽を伝えられる素敵な人。
(あぁ、また埋もれて。)
囲われて何処かへ連れて行かれてしまうのではないかと、ハラハラする。
遠巻きにそっと見守るように、あなたを視線で追う。少し胸が痛んで、肩にかけている鞄のベルトをぐっと握り締めた。
(―――っ。大丈夫、いつもの事だから。)
溢れる取り巻きの中へ入ることも出来ず、見守るしかない。
せめて、穏やかに笑って戻ってくるのを待ちたいのに、心は少しもままならない。
視線を外すことも出来ず、居た堪れなくなって俯いた。枯れ葉が1枚、風に流されて足元へ寄り添った。情けない自分を映しているような気がした。


ふと気が付くと、囲みの中からあなたが大袈裟に手を振っていて、満面の笑みを寄越していた。
小さく手を上げると、囲みの中からこちらへ走り出てきた。
「かっちゃん、ごめんね!おまたせ。行こう!」
あなたは囲んでいた人たちに向かって、大きく手を振って、お礼を言っている。
「場所聴いてきたから、こっち!」
躊躇いなく自分の手を握るあなたの手に釣られて、歩き出した。

2/9/2024, 10:24:42 AM


【花束】

いっぱいの花を、あなたに贈ろう。
溢れんばかりの花を、ひとまとめにして。
あなたが好きな色、あなたに似合う色、あなたが映える色、あなたの隣に傍にあるだけで、どれもきっと綺麗に見えるだろう。
迷っていたら、店員さんに声をかけられて、あれよあれよと言う間に、大きな大きな花束が出来上がった。


太陽のように笑うあなたに、花を買って帰ろうとふと思い立って、花屋さんの前で立ち止まる。
「太陽のような、大切な人に。」
太陽を写し取ったような向日葵を中心に、可愛らしくまとめた花束。



―――あなたは喜んでくれるだろうか。



「いつも、ありがとう。」
家に辿り着くと、中から花の香りがした。
「えぇ〜、嬉しい!ありがとう!」
出会い頭に、そのまま手にしていた花束を相手に渡す。
「居間、見てもらえる?」
嬉しそうに花束を抱き締めるあなたが、照れた様に笑う。
「何だか、二人して同じ事考えてたみたいだよ?」
居間に入った途端、花の香りが強くなる。
「…え?」
頬を恥ずかしそうに掻いているあなたが、はにかんだ。
「かっちゃんに似合うやつ〜、とか考えてたら、こんなにおっきくなっちゃって…。」
ひと抱えどころか、そのまま飾っておけるような大きさになっていて、純粋に驚いた。
「でっか…。良く持って帰れたな。」
ふたりは、それぞれに買ってきた花束を仲良く飾って、似た者同士だと笑いあって、喜びを分かち合う。


私から、愛を込めて―――。

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