たろ

Open App
2/9/2024, 10:24:42 AM


【花束】

いっぱいの花を、あなたに贈ろう。
溢れんばかりの花を、ひとまとめにして。
あなたが好きな色、あなたに似合う色、あなたが映える色、あなたの隣に傍にあるだけで、どれもきっと綺麗に見えるだろう。
迷っていたら、店員さんに声をかけられて、あれよあれよと言う間に、大きな大きな花束が出来上がった。


太陽のように笑うあなたに、花を買って帰ろうとふと思い立って、花屋さんの前で立ち止まる。
「太陽のような、大切な人に。」
太陽を写し取ったような向日葵を中心に、可愛らしくまとめた花束。



―――あなたは喜んでくれるだろうか。



「いつも、ありがとう。」
家に辿り着くと、中から花の香りがした。
「えぇ〜、嬉しい!ありがとう!」
出会い頭に、そのまま手にしていた花束を相手に渡す。
「居間、見てもらえる?」
嬉しそうに花束を抱き締めるあなたが、照れた様に笑う。
「何だか、二人して同じ事考えてたみたいだよ?」
居間に入った途端、花の香りが強くなる。
「…え?」
頬を恥ずかしそうに掻いているあなたが、はにかんだ。
「かっちゃんに似合うやつ〜、とか考えてたら、こんなにおっきくなっちゃって…。」
ひと抱えどころか、そのまま飾っておけるような大きさになっていて、純粋に驚いた。
「でっか…。良く持って帰れたな。」
ふたりは、それぞれに買ってきた花束を仲良く飾って、似た者同士だと笑いあって、喜びを分かち合う。


私から、愛を込めて―――。

2/8/2024, 11:17:43 AM


【スマイル】

にこにこ、にこにこ。
いつも笑っているあなた。
嬉しそうに、楽しそうに、はにかんだり、大きな口を開けて笑って。
素直に喜怒哀楽を表現出来るあなたが眩しくて、目を背ける事もできなかった。

「かっちゃん!見て、こんなに沢山!」
庭木に水をやるんだと小さい庭に出て行ったあなたが、ボウルいっぱいに夏野菜を収穫してくる。
出来立ての麦茶をたっぷりの氷を入れたグラスに注いで、汗だくで戻ってくるあなたに手渡す。
「ありがとう。今年も、良く実るなぁ。」
ボウルを受け取って、水に潜らせて良く絞ったタオルを渡す。
「ひゃぁ、冷たい!気持ちぃ~♪」
喉を鳴らして、麦茶を一気飲みするあなたが、嬉しそうに笑っている。
「はぁ〜、生き返る〜。」
汗を拭きながら、洗面所に駆け込んでいく背中を見送る。
「…忙しいな。」
ふふふと笑って、ボウルの中の夏野菜たちを水で洗う。
「何にしようかな。」
キュウリ、トマト、オクラ、ピーマン…。
「かっちゃん!その子達、どうする?無難にサラダ?スープも良いよね。パスタソースも行けそうだし、肉とか魚と煮込んでも良いかな?」
パタパタと足音を立てながら、駆け戻ってくるあなたが、元気よく提案してくる。
一緒に作って、一緒に食べる。
不思議と笑みが零れるのは、あなたの太陽のような笑顔の所為かもしれない。

2/7/2024, 11:54:17 AM


【どこにも書けないこと】

秘密がある。
誰にも言えない大きなことから、些細なクセのような小さなことまで。
誰にも洩らしてはいけない秘密を、共有できない悲しみを、飲み込んで生きて行くものだと思っていた。
(あなたが好き。幼馴染みで、親友で。今では誰よりも大切な人。)
大切なあなたにも、きっと伝えることは無い。そう想っていたのに。

「大好き。愛してる。」
いつしかあなたは、簡単に愛の言葉を投げかける様になっていた。
応える術は無いと思い込もうとする自分を遮る様に。
「本当に。産まれたときから、ずっと好きなんだ。」
あり得ないと解っているのに、あなたが表す言葉と表情は、囲って封じ込めた感情を暴き出そうとする。
「ごめんね、好きになって。」
くしゃくしゃに顔を歪めて、自嘲気味に笑って振り返るあなたを思わず抱き締めた。
「謝るのは、お前じゃない。…ごめん。」
自分が先に産まれて、あなたが少し遅れて産まれてきた。
「産まれたときから、ずっと好きだ。」
あなたに物心がつく、きっと一瞬前に自分の物心がついた筈だ。
「ずっと、目で追ってた。」
証左は残せない。何も残らない、残す事もできないこの関係を、明らかにするつもりはなかった筈なのに。
「お揃いだ。遠回りしちゃったけど、これからもよろしくね。」
情け深いあなたの心と優しさに、ずっと救われてきた。
喧嘩や諍いも何度かあったけれど、結局あなたの深い懐から飛び出せる勇気もなくて。
諦める為に始めた筈の同棲も、いつの間にか板に付いてしまった。
「オレはね。かっちゃんが、良いの。」
泣き笑いの表情で、あなたが笑う。

きっとふたりは、泣きながら笑いながら、書き残せない日々を重ねていくのだろう。

2/6/2024, 7:42:44 PM

『時計の針』


壁掛けの時計が、カチコチと時を刻んでいる。
独りぼっちの夜には良く響くその音に、早く眠れと急かされている様に感じて、時計の針を睨みつけた。
(少しは寝ないと。)
目を瞑っても、耳は運針の音を拾う。
羊を数えようにも、規則正しいその音に沿って数えてしまうので、目が冴えるだけだ。
(寝よう。)
ごそごそと布団を頭まですっぽり被った。
布団の中まで、追い駆けてくるその音は、まだ少し小さく鳴っていた。

2/5/2024, 2:06:59 PM


【溢れる気持ち】

「好き、大好き!愛してるっ!」
嘘だか本当だか判らないけれど、いつも言ってくれるその笑顔に、釣られるようにして笑う。
「はは、ありがとう。」
溢れる気持ちが止まらないのだと、あなたは言う。
「本当だよ?」
抱きついてくるあなたの重みが、愛おしいと思うのは、あなたの溢れ出す気持ちに触れたからだろうか。
「で、何処を好きになったわけ?」
いつも照れくさくて誤魔化していたが、思い切って尋ねてみた。
「聴いてくれるの?やった!」
嬉しそうに好きなところを列挙していくあなたに気圧されて、堪らず逃げ出した。
「待ってよ〜!」
火が出そうな程、熱くなった顔を誤魔化す。
「嘘ぉ、まだ半分も言ってないんだけど…?」
心臓に悪いと逃げ回る。
「待って、もう言わないから、待って!」
自分の部屋に逃げ込んで、扉を背にして顔を覆う。
「…恥ず。」
心臓が何個あっても足りない。むしろ首筋に心臓が迫り上がって来たような気さえする。
「ごめんね、溢れ過ぎて驚かせちゃったよね!小出しにするから、ゆっくり聴いてほしいな…。」
自宅で良かったと、胸を撫で下ろす。
「ごめんね。…下で待ってるね。」
勝手知ったる互いの家と互いの性格を理解しているが故に、深追いしないように接してくれるのも、きっと優しさなんだろうなと、頭では理解している。
「…出難い。」
恥ずかしさが先行するのは如何ともし難く、苦しくなるばかりだ。
「あれで、半分以下って…。何なんだよ。」
心臓が幾つあっても足りない。切実にそう思った。

Next