たろ

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【溢れる気持ち】

「好き、大好き!愛してるっ!」
嘘だか本当だか判らないけれど、いつも言ってくれるその笑顔に、釣られるようにして笑う。
「はは、ありがとう。」
溢れる気持ちが止まらないのだと、あなたは言う。
「本当だよ?」
抱きついてくるあなたの重みが、愛おしいと思うのは、あなたの溢れ出す気持ちに触れたからだろうか。
「で、何処を好きになったわけ?」
いつも照れくさくて誤魔化していたが、思い切って尋ねてみた。
「聴いてくれるの?やった!」
嬉しそうに好きなところを列挙していくあなたに気圧されて、堪らず逃げ出した。
「待ってよ〜!」
火が出そうな程、熱くなった顔を誤魔化す。
「嘘ぉ、まだ半分も言ってないんだけど…?」
心臓に悪いと逃げ回る。
「待って、もう言わないから、待って!」
自分の部屋に逃げ込んで、扉を背にして顔を覆う。
「…恥ず。」
心臓が何個あっても足りない。むしろ首筋に心臓が迫り上がって来たような気さえする。
「ごめんね、溢れ過ぎて驚かせちゃったよね!小出しにするから、ゆっくり聴いてほしいな…。」
自宅で良かったと、胸を撫で下ろす。
「ごめんね。…下で待ってるね。」
勝手知ったる互いの家と互いの性格を理解しているが故に、深追いしないように接してくれるのも、きっと優しさなんだろうなと、頭では理解している。
「…出難い。」
恥ずかしさが先行するのは如何ともし難く、苦しくなるばかりだ。
「あれで、半分以下って…。何なんだよ。」
心臓が幾つあっても足りない。切実にそう思った。

2/5/2024, 2:06:59 PM