悩みに悩んで、あなたにLINEを送ってみた。内容を考えてたら止まらなくなってしまって、なんども書いたり消したり書いたり消したり……そんなLINE。
勇気を出して紙飛行機のボタンを押した。
「既読」が気になる。
あなたにとどいてるかな?
ちゃんと読んでいてくれてるのかな?
読んでくれたら嬉しいけど、日頃LINEなんかほとんど送らないし、もし引かれてたら怖いな……。
「新着メッセージがあります」
空が紫色になった頃
朝焼け
眠れなかったから、少しクラクラする
猫も、犬も、会社も、静かに寝息を立てている
未来を考えた
これからどうなるんだろう。このままでいいのかな。これからの僕は、笑えているのかな。
少し目が滲んだ。ダメだ、考えても仕方ない。
心にもない前向きなことを考え、僕は僕を励ます。
これでいいんだ。
これでいいんだ。
たくさんの「僕らしさ」でできた虎の毛皮を被って
ちいさな僕は、大きくなっていく。
そういえば『香水を読む』っていう記事広告があったなぁ。
確か、いつも付けている香水とか、オシャレな香水の説明文やキャッチコピーを読む、っていう記事。かなり詩的な内容ばっかりだから、どんどん話が膨らんでいく、みたいな。
それにしても、香りに説明を付けるっていうのは途方も無いことだと思うんだなぁ。
うまいものを食う
食事とは生き甲斐であり、人間の本質である。
人間と食べ物の間には、独自の世界がある。
うまければうまいほどその世界は深化していく。
捕食・被食の関係を超越したその世界の中に、言葉は、ない。
いや、言葉を用いる必要が無い、というべきなのだろう。
言葉は便利だ。
言葉は自身の考えを明確化し、発することで相手と交流できる効果を持つ。
しかし、言葉は諸刃の剣でもある。
言葉を考えることで自身の思慮を固めてしまうからだ。
うまいものには、柔らかな思慮が必要だ。
うまいものと向き合うときには、ただ「うまい」と思えばいい。
言葉を連鎖させるように「何々が是々でうまい」とまで言う必要がない。
一人で食べるとき、世界には自分と、食べ物しかいない。
三人称は無いのだ。
言葉でなく、感性で向き合いたい。
あなたは急にやってくる
やってくるや否やわたしたちに覆いかぶさり
乾いた風で
キンモクセイの香水が香る
赤や黄色で華やかに彩られたドレスは
それまでのわたしたちの熱を冷ます
わたしたちはゆっくりと動きを止めて
あなたの静けさに耳を澄ませる
何も聞こえない心地良さ
もうすぐ秋がやってくる