独りを気取り、寂しがり
君をさらって神隠し

ただ君だけ

水底で朽ちゆく船が歌うレクイエム
水上を走りさる影に安堵して
忘れないでと、今日も歌う

お題：未来への船

所詮はただの文字列だ
手を伸ばすのは私じゃない
落とした言の葉を拾うのは
心が動いた誰かの手

テーマ：意味

　私の手は働き者だ。
　メイクをする。繊細で細やかな手捌きは、顔のビフォーアフターを見れば一目瞭然。もちろん、ネイルもバッチリ。まるでプロに任せた仕上がりで、まさに神業。だけど、ああ、なんて骨ばった手なんだろう。
　私の手は醜い。
　ウィッグを被れば、ほら、私は理想の私になるのに、こんなにもゴツゴツと節くれだった、美しさのかけらもなくて、まるでアンバランス。でも、この手でなければ、私は私にさえなれない。
　私の手。愛しているわ。でもこの現実を憎んでいるの。

お題：好きになれない、嫌いになれない

「ねぇ、教えて？　今、何を見てるの？
あなたは時折、どこか遠くを見つめている。
会話の途中や、ご飯を食べているとき、何げないその瞬間にどこか遠くを見つめている。
ねぇ、今、何を考えているの？
あなたはきっと、うまく隠しているつもりでしょう。
でもね、私にはわかるのよ。そのふとした瞬間、あなたの心がここにはないことを。
だから、ねぇ、お願い、教えて。
今、あなたの心に住む人の名を」

お題：ふとした瞬間