杢田雲

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4/28/2023, 4:17:43 PM

瞬きの刹那、枯れ葉がハラリと落ちた。
「この葉が散ったら、ってやつ、あるじゃん」
ベッドから外を見ている彼女が言った。
「病気、そんなに悪くないって自分で言ってたじゃない」
「違うよ、散る頃には退院できるんじゃないかなって言おうと思ったの!」
私は少し焦った心を落ち着かせるために深呼吸した。
「ねえねえ、体育祭どこが勝った?」
「A組」
「あー、我らがD組はダメだったかぁ」
「準優勝だよ」
私は指でVサインを作って彼女の顔の前に突き出した。
「え、頑張ったね!てかなんでそんなにテンション低いの?」
「あんたこそなんでそんなにテンション高いの?」
「君が来てくれたから嬉しくて」
彼女はそう言って、恥ずかしそうに唇を尖らせた。
「私も会えて嬉しいよ。早く元気になって一緒に学校行こうね」
人生の刹那、青春の一ページ。

4/26/2023, 4:47:41 PM

良いとか悪いとかいうことは、極論すると個人の倫理観に依るものだ。
だから俺がそれを善だと言う時、お前がそれは悪だと言うのはおかしなことじゃない。
可能性としては、ありうることだ。

来週の授業で使うディベートの資料をまとめている今、俺たちの意見の合わなさは致命的と言えた。
「お前はこの条件でもBが正しいと思うのか?」
「Bの意見以外に共感出来る訳ないだろ、常識的に考えて」
「俺の話聞いてた?Aに誘導しようって戦略だったじゃん」
「せこい真似すんな、Aは間違ってる」
「俺はAに共感してんだよ!」
「お前、いつも逆張りしてくるよな」
ため息を吐くな、やれやれって顔をするな!
俺は時計を見上げて残り時間を計算した。
「あと1時間で教室追い出されるぞ」
教室の窓の外では部活動に勤しむ生徒の声がしている。
「1時間もあるなら終わるだろ」
「お前がいちいちひっくり返さなきゃとっくに終わってたよ」
「間を取って、AとB並べてどちらが妥当でしょう?っていう問いにすればいいだろ」
「まあ、そうするしかないか……俺ら二人ですら意見割れてるもんな……」
俺はA4のプリントに丁寧に二つの主張を書き込んで、どちらが妥当だと思いますか?と太字で書いた。
「先生まだいるかなぁ」
「書道部の顧問だっけ?部室どこ?」
「向かいの棟の3階の端」
俺たちは立ち上がって荷物を背負い、プリントを持って教室を出た。
「腹減った。ラーメン食って帰らねぇ?」
「俺スイーツの気分なんだけど」
やっぱり俺たち、気が合わない。
「この、あまのじゃく!」
てくてくと先を行く背中に言葉を投げると、あまのじゃくは前を見たままひらひらと手を振った。