秋恋
飽くほど永いこいをしてきた
紅葉のように 燃える 想いも川を流れて
時間よ止まれ
時間なんて止まらなくていいから
巻き戻ってくれたらいいのに
夜景
初めて夜景を見た時の心情を、
多分一生わすれない
街で1番高いデパートの中は、きっと宝箱のようにキラキラしている。
あたし達はいつも手を繋いで、向かいの小さくて汚いビルの間からこっそりそれを見ていた。ショーウィンドウに飾られたドレス、靴、ショール。帽子にぬいぐるみ、おもちゃ。どれも豪華で、贅沢で、美しかった。あたし達はそこに入るどころかは近づくことさえできなくて、そのデパートから出てくる綺麗な人間を、いつもふたりで隠れて見てた。あのデパートは天にも届くほど高く輝くのだもの、きっと上から下まで心躍る宝物でいっぱいなはず。そしてそんな宝箱の上から見た夜は、きっと夢のような景色だろう。
いつか、あの街1番大きなデパートの屋上から、ふたりで夜景を見下ろそう。
夜景の輝きのひとつにすらなれない小さくて汚い2人は、いつも手を繋いでそんな約束を確かめあっていた。
幼かったのだ。
いつしか、大人になってしまった2人。
あの頃眩しかった全ては、もはやくすんで石ころになった。
なんにも信じることが無くなって、つかれて、きたない。
だったらせめて、この街を煌めく星になろう。
2人は最初で最後、夢の場所に立った。手を繋いで、1歩。また1歩。そうして見えた、この街1番からの夜。
ね、あたし達は大人になった。
それでも2人、それだけはあの頃のまま。
だからこのまま、終わりにしようか。
空が泣く
空が泣いている、とその女はよく言った。
何を気持ち悪いことを、と私はそれだけ思った。
擬人法を日常生活で使ってくるやつは気持ちが悪いと相場が決まっているし、実際その女は得体の知れない奴だった。
しかし、もしかしたら、私はその言葉の意味をよく考えてみるべきなのかもしれない。と、今は思う
空が泣いている、なんてその女が言っていたのは、
決まってよく晴れた日の事だった。そして15時から17時あたりの夕方くらいが多かったかもしれない。
だから余計に、意味がわからないと思ったのだ。空が泣いている、なんて素面で聞けば吐き気のするような言葉、使うとすれば雨がふっている時くらいだろうに。あの女は何をもってそんな言葉を吐いたのだろうか。
今更考えても意味などないが。
空が泣いている、なんでその女が言っていた時、女はどんな顔をしていたのだろうか。
そういえば、しらない。
何度も何度も、聞いていたのに。
いや、あの女はその言葉を吐く時、決まって空を見上げていた。そうだ、だから、私は知らない。
あの女は空を見上げて、私は地面を見ていた。
ぽつぽつ ぬれたあしもとを。
ああ、漸くわかった。わかったよ。
ねえ、言ってよ。今もなんでしょ?空が泣いてる。
ああ、いつもと、逆だ。
ようやく見れた。あんたのかお。
ああ、もう、しかたないな。
今度は私が見ていてあげる。泣いてていいから、あんたはちゃんと、わたしを見てて
命が燃え尽きるまで
あなたの炎が私を射抜いて
私の心も燃えてしまったの
あなたはわるいこ
だからあなたの大火と混ぜて
わたしとひとつの炎になって
私が先に地獄に落ちても見ているよ
せかいにたったひとつだけのあなた
命が燃え尽きるまで
あなたは あなたでいてね