空が泣く
空が泣いている、とその女はよく言った。
何を気持ち悪いことを、と私はそれだけ思った。
擬人法を日常生活で使ってくるやつは気持ちが悪いと相場が決まっているし、実際その女は得体の知れない奴だった。
しかし、もしかしたら、私はその言葉の意味をよく考えてみるべきなのかもしれない。と、今は思う
空が泣いている、なんてその女が言っていたのは、
決まってよく晴れた日の事だった。そして15時から17時あたりの夕方くらいが多かったかもしれない。
だから余計に、意味がわからないと思ったのだ。空が泣いている、なんて素面で聞けば吐き気のするような言葉、使うとすれば雨がふっている時くらいだろうに。あの女は何をもってそんな言葉を吐いたのだろうか。
今更考えても意味などないが。
空が泣いている、なんでその女が言っていた時、女はどんな顔をしていたのだろうか。
そういえば、しらない。
何度も何度も、聞いていたのに。
いや、あの女はその言葉を吐く時、決まって空を見上げていた。そうだ、だから、私は知らない。
あの女は空を見上げて、私は地面を見ていた。
ぽつぽつ ぬれたあしもとを。
ああ、漸くわかった。わかったよ。
ねえ、言ってよ。今もなんでしょ?空が泣いてる。
ああ、いつもと、逆だ。
ようやく見れた。あんたのかお。
ああ、もう、しかたないな。
今度は私が見ていてあげる。泣いてていいから、あんたはちゃんと、わたしを見てて
9/16/2024, 12:45:08 PM