♯光輝け、暗闇で
いつか、キミの行く道を照らす星となるように。
♯酸素
あなたといると、とても息が苦しくなる。
まるで、あなたに私の酸素を奪われているようで。
♯記憶の海
これは、
どれだけ引きちぎっても、
どれだけバラバラにしても、
どれだけこなごなにしても、
海の底からゾンビのようによみがえってくる君と、そんな君をまた沈めようとする僕との戦いだ。
♯ただ君だけ
そう事あるごとに貴方は私の耳元へそっと囁く。私の腰を優しく抱き寄せ、君は特別なんだと甘い言葉を続ける。
――けど、まるで、何百何千回と口にしてきたようなこなれた口調が、彼の本当の気持ちを教えてくれる。
♯未来への船
海岸沿いをのんびり散歩していると、片手で持ち上げられるくらいのビンが砂浜に埋もれていた。
飲み干したものをポイ捨てしたようなビンなら、漂着ごみと思って気に留めなかったかもしれない。
だがビンはコルクでしっかりと栓をされ、中には手紙らしきものが入っていた。丸められ、麻紐でくくられている。
――もしかしてメッセージボトル?
興味を引かれた私は家へと持ち帰り、さっそくコルクを引き抜いた。ビンを逆さまにして手紙を取り出す。麻紐を慎重にほどくと淡い水色の便箋が現れた。
そこにはアンバランスで取っ散らかった字が並んでいた。幼稚園児くらいのものだろうか。なんとか読み進めていくと、どうやら未来の自分に向けたメッセージであるらしい。
――パイロットになっていますか? なんて、まるでウチの孫みたいね。
その孫はもう中学三年生。パイロットになるという幼稚園の頃からの夢を今でも大事に抱いている。
私は手紙を元通りにし、ビンの中へ戻した。
明日になったら、海へ送り出してあげよう。
この未来への船は航海を終えて私の元へ辿り着いたのではなく、まだ旅の途中だろうから。