♯未来への船
海岸沿いをのんびり散歩していると、片手で持ち上げられるくらいのビンが砂浜に埋もれていた。
飲み干したものをポイ捨てしたようなビンなら、漂着ごみと思って気に留めなかったかもしれない。
だがビンはコルクでしっかりと栓をされ、中には手紙らしきものが入っていた。丸められ、麻紐でくくられている。
――もしかしてメッセージボトル?
興味を引かれた私は家へと持ち帰り、さっそくコルクを引き抜いた。ビンを逆さまにして手紙を取り出す。麻紐を慎重にほどくと淡い水色の便箋が現れた。
そこにはアンバランスで取っ散らかった字が並んでいた。幼稚園児くらいのものだろうか。なんとか読み進めていくと、どうやら未来の自分に向けたメッセージであるらしい。
――パイロットになっていますか? なんて、まるでウチの孫みたいね。
その孫はもう中学三年生。パイロットになるという幼稚園の頃からの夢を今でも大事に抱いている。
私は手紙を元通りにし、ビンの中へ戻した。
明日になったら、海へ送り出してあげよう。
この未来への船は航海を終えて私の元へ辿り着いたのではなく、まだ旅の途中だろうから。
5/12/2025, 6:52:32 AM