『平穏な日常』
いつ、誰にでも奪えてしまう脆く儚いもの。
そんなものが平穏、と言えるのか私には分からない。
でも、今日私が歩む一日が“平穏な日常”であることを心から祈る。
『過ぎ去った日々』(病気で亡くなる演出があります)
私はもうあの夏の、友達と帰りながら「暑い、暑い」と言い帰る事も、冬の玄関を開けた時に息が白くて、ああ、嫌だなあ、寒いなあ、と思うことも出来ない。
平日の朝、寝癖が酷く痛い思いをしながら櫛で滑らした黒い髪の毛も何も無くなってしまった。
もうあの『過ぎ去った日々』を送ることは出来ないけど、私はまだ日々を過ぎることは出来る、はず。
私はまだ負けていない。だからここに私の好きだった日々を懐かしむ手紙を書いている。 20××年 7月 18日
今は亡き私の友人の手紙を読み終え、涙が頬を伝う。
家族ぐるみで仲良くしてくれた友人のお母様に深くお辞儀をし、彼女のお墓の前に座る。
「私が変わってあげたかった、ずっと大好きだよ」
『お金よりも大事なもの』
そんなものあると思う?
君はかき氷を頬張る僕を見ながらそう言った。
唐突な質問に僕はかき氷が口の中で溶けていくのを感じながら質問に対する回答を考えていた。
口の中いっぱいに入ったかき氷が溶け、飲み込み終わったあと質問の難易度につい笑ってしまい
「んー。僕には難しいや笑」と、答え
それに対し彼女は「何それ笑」と、返した。
少し前の僕に伝えたい、この瞬間がお金より大事なものなのかもしれない、と。
『月夜』
まるで夜明けのような明るさを反射し、
輝くひとつの大きな星を見つつ
私の隣に座り目を伏せる彼女に優しく接吻をした。
すると彼女は「明るいので、貴方の顔が良く見えます。」
といつの間にかぱっちりと開く目でこちらを見つめ
少し頬を赤らめながらそう話した。
きっと私の赤い顔も、
大きな星に照らされて見えているのだろう。