「正直オワコンじゃないか?」
同居人が大まじめな調子でそう言ったので、俺はミカンを剥く手を止めて、顔を上げた。
「なにが?」
「"良いお年を"っていう挨拶」
同居人いわく、"良いお年を"という言葉は、使い古されすぎて新鮮味がない。"お年を"で切れるのもまた気持ちが悪い。どうせ言うなら最後までちゃんと言え、とのことだ。要するに彼は、"良いお年を"という挨拶が気に食わないらしい。
いったい何を言ってるんだろうと思うが、こいつが真剣な顔で意味のわからない持論を展開するのは、別に今に始まったことではない。
「“良いお年を”に次ぐ挨拶を考えるべきだ」
「たとえばどんなの?」
「…………」
黙り込んでしまった。オワコンとか言うわりに、代替案は特に持ち合わせていないらしい。肩透かしを食らった気分になり、俺はミカンを剥くのを再開した。
今年も終わりを迎えるというのに、相も変わらず、こいつとは中身のない会話ばかりしている。
こたつに入って、ミカンの白い筋をちまちま取りのぞきながら、どうでもいい話をだらだらと聞き流す。たぶん、来年も再来年も、こんな調子で過ぎていくんだろう。隣にこいつがいる限り。
【テーマ:良いお年を】
「パンくずに似てる」
手の中の小瓶をしげしげと見つめながら、そいつは言った。わたしはちょっと眉をひそめる。女の子から贈り物をもらっておいて、ありがとうとか、きれいだなとか、気のきいたことひとつ言えないのか。
「パンくずじゃないから、食べちゃだめよ」
ロマンのかけらもないこの男が、まちがってもコルク栓を抜いて瓶の中身を舌の上にぶちまけたりしないように、わたしは釘を刺した。
「パンくずじゃないなら、これ何」
「星の砂」
「ほしのすなって何」
そういえば、なんだろう。改めて聞かれると、何なのかはよくわからない。星の形をした、不思議なかけら。これは一体なんなのだろう。
ただ、売店の棚にこぢんまりと並んだ小瓶がかわいかったから手にとった。『星の砂』って名前もなんだか不思議で素敵だと思って、おみやげに選んだ。
「わからないけど、きれいだから買ったの」
「ふーん」
「いらないなら返して」
「なんでだよ。くれるんだろ?」
「パンくずって言わないで」
「言わない、言わない。ほしのすなだろ」
「そう、星の砂。気に入った?」
「うん。おまえがくれたから」
「…………」
そういうことはさらっと言えてしまうから、わからない。
【テーマ:星に包まれて】