おさしみ泥棒

Open App

「パンくずに似てる」

 手の中の小瓶をしげしげと見つめながら、そいつは言った。わたしはちょっと眉をひそめる。女の子から贈り物をもらっておいて、ありがとうとか、きれいだなとか、気のきいたことひとつ言えないのか。

「パンくずじゃないから、食べちゃだめよ」

 ロマンのかけらもないこの男が、まちがってもコルク栓を抜いて瓶の中身を舌の上にぶちまけたりしないように、わたしは釘を刺した。

「パンくずじゃないなら、これ何」
「星の砂」
「ほしのすなって何」

 そういえば、なんだろう。改めて聞かれると、何なのかはよくわからない。星の形をした、不思議なかけら。これは一体なんなのだろう。
 ただ、売店の棚にこぢんまりと並んだ小瓶がかわいかったから手にとった。『星の砂』って名前もなんだか不思議で素敵だと思って、おみやげに選んだ。

「わからないけど、きれいだから買ったの」
「ふーん」
「いらないなら返して」
「なんでだよ。くれるんだろ?」
「パンくずって言わないで」
「言わない、言わない。ほしのすなだろ」
「そう、星の砂。気に入った?」
「うん。おまえがくれたから」
「…………」

 そういうことはさらっと言えてしまうから、わからない。

【テーマ:星に包まれて】

12/30/2025, 8:23:18 PM