おさしみ泥棒

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「正直オワコンじゃないか?」

 同居人が大まじめな調子でそう言ったので、俺はミカンを剥く手を止めて、顔を上げた。

「なにが?」
「"良いお年を"っていう挨拶」

 同居人いわく、"良いお年を"という言葉は、使い古されすぎて新鮮味がない。"お年を"で切れるのもまた気持ちが悪い。どうせ言うなら最後までちゃんと言え、とのことだ。要するに彼は、"良いお年を"という挨拶が気に食わないらしい。
 いったい何を言ってるんだろうと思うが、こいつが真剣な顔で意味のわからない持論を展開するのは、別に今に始まったことではない。

「“良いお年を”に次ぐ挨拶を考えるべきだ」
「たとえばどんなの?」
「…………」

 黙り込んでしまった。オワコンとか言うわりに、代替案は特に持ち合わせていないらしい。肩透かしを食らった気分になり、俺はミカンを剥くのを再開した。
 今年も終わりを迎えるというのに、相も変わらず、こいつとは中身のない会話ばかりしている。
 こたつに入って、ミカンの白い筋をちまちま取りのぞきながら、どうでもいい話をだらだらと聞き流す。たぶん、来年も再来年も、こんな調子で過ぎていくんだろう。隣にこいつがいる限り。

【テーマ:良いお年を】

12/31/2025, 4:17:42 PM