テラ

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9/6/2022, 4:21:50 PM

君の泣き声が聞こえてくる。
お前と仲良くするのは飽きましたと言って、また一人ともだちが土に還る。墓石は腰掛けるのにちょうどいい具合、下からカラコロ楽しそうな声がする。埋まる人々の亡霊よりも、じりじりと肌が焼ける音が恐ろしい、朝が昼になるのが恐ろしい、僕は死んだことがないので、死ぬより恐ろしいことが多くある。
君の泣き声が聞こえてくる。
お前より苦しい人間はごまんといる、と叱られる。憐れさを比較しなさい、より憐れっぽい人を見極めなさい、そして安心しなさい、と殴られる。君の世界は君の中にしかなく、そこで死にかけてるのは君しかいないが、君は憐れではないらしい、
そんなの狂ってるって僕は言うよ、この傷が化膿して君自身を死に至らしめてくれれば何か分かるかもしれない、それだけを希望にすることは、馬鹿げた話だよ、なあ、君は十分やさしかったよ。
ほら起きて。僕ら戦争にいかなきゃいけない。

時を告げる

9/5/2022, 4:08:39 PM

かつて命がありました。瑞々しくはつらつとした命でした。深い呼吸は僕を寝かしつけ、きらきらした目で物語を僕に語ってくれたものでした。おまえさん、生きるというのはね、おまえさんが考えるよりも複雑でないんだよ。今はもう干からびて、じっと分解されるのを待っています。萎びて固く閉じた目が、水を湛える、僕を安堵させ、再び僕を彼方に連れていく、もう一度あなたの声を聞きたいのだ、命が不可逆と知っていながら僕は再生を待つ、風が今日も強く吹く、僕の中の貝だった部分が覚えているから、海の音が聞こえるのかもしれない。

貝殻

9/4/2022, 3:26:38 PM

暴力を受けた、酷い傷になった、傷から僕が壊死していく、砂になる自分を眺めていると、誰かが「あいつは幸せだな」と呟いた。僕が幸せに死んだと知って全人類が安堵する。めでたしめでたしと言って本を閉じ、眠ってしまった小さな子の頭を撫でて寝顔にそっと口づける。僕は地獄に落ちてもよかった、君にはひとつも関係なかった、君に忘れられるくらいなら僕は不幸になりたかった。ちかちか尖った虹の光が僕を突き刺す、お前は全部が間違ってる、美しくないお前が悪いって僕を嗤う、君は知らないだろうけど、僕こんなことちっとも望んでなかったよ。

きらめき

9/3/2022, 4:52:46 PM

生まれてきた意味を一億年考えても答えが出ない、じゃあそんなものないんだよって、本気で言ってるなら絶交しよう。天地がひっくり返るほどの衝撃が、世界中そこかしこで発生していて、それでも僕ら静かに授業を受けていた。誰も証明してくれなかった、物凄いスピードで天地がひっくり返り続けてるって。僕らこんなに酔ってるのに、誰も僕らの話なんか聞こうとしなかった。もういいよ、まあだだよ、君の一挙手一投足を絵に描きたい、絵を見た全員、君がどっかで生きているって錯覚するくらいに君を緻密に再現したい、その瞬間に僕の生まれてきた意味は完結する、僕は未解決問題を証明する。

些細なことでも

9/2/2022, 7:14:59 PM

迷わず暗闇を歩けた記憶は、光に貫かれた日に失った。両眼の歓喜とぼくの絶望が発火する、そっと火種を包み込み、確かな拍動をカンテラに移し替え、ぼくは歩く、どこまでも歩いてゆける、暗い黄泉路に歌を歌って、きみの凹凸を探しにゆく。

心の灯火

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