テラ

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8/17/2022, 3:46:00 PM

誇らしさ

君の心臓が光っていた
僕の心臓も光っていた

君が僕の心臓を取り出した
僕も君の心臓を取り出した

君の心臓は銀色のナイフだった
僕の心臓は紫色の蝶だった

君のナイフは星より美しく光っていたのに
僕の手の中であっという間に錆びついた
僕は悲しくて君のナイフに涙をこぼした

僕の蝶は花のように羽ばたいていたけれど
君の手の中であっという間に茶色くなった
君は慌てて僕の蝶にそっと息を吹きかけた

ナイフと蝶が死んでいく
僕と君は一緒に生きていけない

君にナイフを返した ナイフが銀色にきらめく
僕に蝶が返ってきた 蝶が紫色の粉をまとう

僕らは一緒に生きていけない

君の心臓が光っている
僕の心臓が光っている

僕らは一緒に生きていけないけれど
僕の心臓は君の吐息を覚えている

8/16/2022, 3:45:53 PM

僕の故郷は静かです。ときどき巨大な生物の声が水を揺らすくらいです。永遠に藍色です。小さな魚が白く光って通り過ぎます。美しいところです。僕は故郷をあまり好きではないけれど、こんな夜は故郷のことを思い出します。

小さい頃によく遊んでくれたおにいちゃんは、ある日里帰りをすると言ってもう帰ってこなかった。黒い水に手を浸すとおにいちゃんの寝息が聞こえてくる。深海はよほど居心地がいいみたい。ここはずいぶん騒がしいけど、海の底はとても静からしいから。
きみもおいで。案外つめたくないよ。

夜の海

8/15/2022, 11:32:52 AM

なんだ夢か! ぱちんと弾けた白昼夢、坂のてっぺんから海を見る。世界の果てを知らないくせに世界の果てへ行く気でいた。夏休みが終わらなければいいのに、いつまでも晴れていればいいのに、生き物が死ななければいいのに。みんな望んでいるのにみんな叶えようとしないのはなんでだろうね。しあわせになりたいのかもしれないね。僕らは無敵だ、世界に怖いものなんかひとつもない、なあ、春になったら東京へ行くってほんとうかい?

自転車に乗って

8/14/2022, 2:12:44 PM

どいつもこいつも戦闘狂。ぼろぼろの市街地で、声を上げない赤ん坊は空の青さを知っていた。僕らは風穴の向こうに広がる宇宙が世界で一番美しいはずだと言って、腕を失くした大人たちは君が血だらけになるのが許せない。君の胸の真ん中に、穴が空いてるから不健康って誰が決めたの。君は何にも起こってないみたいな瞳をして、恋をして、気が狂って、銃を片手にひかりの街へ走っていく。

心の健康

8/13/2022, 11:08:36 AM

理解してもらえない、なんてことはどうでもいいことで、全部意味わかんなくたっていいよ、脈絡とか、正しくなきゃいけないとか、誰かを救わなくちゃとか、僕がきみを理解できないのと同じように、きみもきみ自身を理解できる日なんか来ない、でもそれに絶望する必要はないってこと、きみは、毎分毎秒毎ミリ秒、他人を生んで、殺して、また生んで、繰り返して、命からがら生きてるよ。きみが好きだ。人殺しのきみが、好きだ。昨日も十年前も愛してる、今日も僕らは他人同士、仲良くしよう。

君の奏でる音楽

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