子供の頃の好奇心
楽しかった思い出
笑い合えている人
お気に入りのもの
素敵な未来理想図
そして、自分自身
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大事にしたい
慈愛に満ちた眼差しを向ける横顔を見て、いつかその瞳に映りたいと強く思った。今まで望めば大抵のものは手に入ったからこそ、己が何かを乞い願うだなんて。全ての中心がきみを軸に回っているような、浮つきながら心地よく、それでいて不安に駆られる感覚だ。どうしたって手放したくはないと思う一方で、なんて烏滸がましい感情を抱いているのだろうと悩む日々。
こんなにも人を好きになったのは初めてだ。このまっさらな恋慕は、まだ愛と呼ぶには拙いだろう。それでも、きみに告げてもいいだろうか? あれこれ出ない答えを考えて、格好つけたいのに空回り。きみへの想いが積もり積もって、そろそろ崩れて来そうだよ。
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本気の恋
ふとした時に気がつくような、小さな違和感がはじまりだった。オムレツを作る時に、卵がふたごだったこと。手にしていた玩具が壊れて、泣き出す子どもを見かけたこと。洗い物をしていた時に、不注意から左の薬指を切ってしまったこと。いずれもに何故だか既視感を覚え、しかし確証は揺らめいた後に消えてゆく。きっと気のせいだろうと思いながら、わたしは色褪せた日常へと再び戻るのだ。
どこか頭の片隅では分かっているのかもしれない。深く深くに閉じ込めた記憶がありながら、忘れたことさえも思い出さないようにしているだけなのだと。けれども、そうでもしなければ、わたしは今度こそ耐えられないだろうから。
どうかこのまま、無色のままで。いつかあなた達の元に向かうまで、わたしの世界に彩りは必要ない。
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喪失感
幼い頃に偶然見つけた桜貝。淡いピンクのグラデーションがとても綺麗で、それはわたしの宝物だった。
夏の陽射しに照らされながらも、春の陽気みたいに柔らかなきらめきを持つ貝殻は、もうわたしの手元にはない。遠くに行く友人に渡したそれが、今どうなっているのかも知りようがない。
けれど、もしかしたらまた巡り会えるのではないかと。わたしは何となく、信じている。
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きらめき / 貝殻
さりげない気遣い
(あなたを好きになったかも)
脱ぎ捨てられた靴下
(あなたを嫌いになったかも)
ありふれた一言
(なんだか悲しくなったかも)
お惣菜の割引シール
(ちょっと嬉しくなったかも)
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些細なことでも