新しい年が始まったけど、ボクは何にも変わらない。
目が覚めたら、カーテンと窓をあけ、まず大きく深呼吸をする。
空を眺め、しばし、ぼーっとする。
トイレ行って顔を洗い、洗濯をまわして、コーヒーを入れる。
洗濯が終わるのを待ちながら、コーヒーをゆっくり味わう。
スマホでもろもろチェックをする。
さて、今日はどうするかな?
ああ、お天気がいいから、今日は読みかけの本川原で読もうかな。
寒いからな、ポットにあったかいお茶を入れて持っていこう。塩むすびもつくろう。外で食べよう。
世の中では、おせちや初詣、年末年始のきまりみたいなことをしているらしいが、ボクはいつもどおりの生活をする。
だってさ、
それがボクにとってもっともボクらしい幸せなことだから。
そういう人生も、いいよね。
1年が終わり
また
1年が始まる
わたしに嘘をつかず
わたしに正直である
こと
穏やかで純粋なわたし
であること
新たなスタートの日
楽しい ことも
悲しい ことも
嬉しい ことも
苦しい ことも
忘れられない あの日の ことも
みんな みんな
星に 包まれて
ゼロ に なる
「あと いちねん。」
夢に出てきた犬が、そう言った。
ボクはそこで目が覚めた。
時計をみると、5時。
今日は出かける予定がないので、もう少し寝ていたいな、とまた目を瞑る。
カーテンの外は少し明るく、鳥のさえずりが聞こえる。やけに、のどかだな。
うとうとしながら、さっきの夢について思いを巡らしてみる。内容が全く思い出せないんだけど、犬のひと言が、やけにリアルに音として耳に残っている。
昨夜はいささか飲みすぎたかなあ。
そもそも、犬が喋るなんて…
ほとんど眠りの世界にまた入りそうなときに、トントン、と誰かに布団を叩かれた。
?
??
???
この部屋にはボクしかいないし、寝ぼけているんだろう、とスルーして再び眠りの世界に入ろうとしたとき、
トントン♪トントン♪
と、また布団を叩かれた。
どう考えてもヘンな状況で、おばけかもしれない、と怖がってもおかしくないのだけど、トントン♪トントン♪と、たたく感じがリズミカルでなんだか可愛らしく、ボクは目を開け、叩かれた場所をそっとのぞいてみた。
そこには、さっき夢でみた犬がいて、
「あと いちねん。」
と、また言った。
その言い方がおかしくて、ボクは思わず吹き出した。なんというか、棒読み、なのだ。しかも、その犬は口角が上がっていて、にっこりと笑っているのだ。
ボクは身体を起こし、犬にたずねてみた。
何があといちねん、なのか?
と。
案の定、
「あと いちねん。」
としか、犬は言わなかった。
まあ、そういうものだ。
ただ、よくみると犬は首に何かを巻いていて、気になって外してみると、それは大判のハンカチだった。そこにはある写真がプリントしてあり、その画像にボクは正直びっくりしたけど、その風景をみて、″あと いちねん″の意味がようやく分かった。
ハンカチをまた犬の首に巻いて、ボクはその犬にお礼を言った。
あといちねんで、ボクがやることがたった今決まったんだ。まず、白くてふわふわのこの犬を大切に飼うこと、それから、あの場所に向かうためにできる限りいろんな人と話すこと。上手くいくかどうかなんて関係なくて、ボクがこれからやっていくことに意味があるんだよな、と思った。
昨日までのボクは終わりだ。
今、ここから新たなボクが始まるんだ。
″あと いちねん″後の未来のために。
虹の橋が架かっています。
橋のたもとには、ふわふわとしゃぼん玉たちが漂っています。
この色は、ワクワクかなあ?
これは、シクシクかなあ?
わあ、これはドキドキかも!
わー、きっとキラキラだ!
しゃぼん玉たちは、みな、いろんな気持ちを味わうために、これから好きな色の道を渡っていくのです。
1番最初にスタートするしゃぼん玉さんが、青色の橋を選んだようです。
さあ、旅のはじまりです!