谷間のクマ

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9/12/2025, 10:11:54 AM

《ひとりきり》

書きたい気持ちはある

2025.9.11《ひとりきり》

9/9/2025, 10:01:44 AM

《仲間になれなくて》

書きたい気持ちはある

2025.9.8《仲間になれなくて》

9/8/2025, 9:56:21 AM

《雨と君》

「あーめあーめふーれふーれ母さんが〜、じゃーのめでおーむかえうーれしいな〜……ってレベルじゃないのよ!!」
 夏休みも終わり、そろそろ夏も終わるなぁという今日、私(熊山明里)はバケツをひっくり返した土砂降りの中を歩きながらひとり声を上げる。
 今日は台風が直撃しており、電車が止まるということで午後から休校になったのだが、私は電車を使っていないのでこの土砂降りの中を歩いて帰らなければならないのである。
「まったくこの雨じゃ傘もアテになんないわよー! でも差さないとさすがに痛いし……」
 ある程度の雨なら走って帰るこの私が傘を差すくらいだから雨の強さは推してしるべしである。おかげで傘を差しているのに全身びしょ濡れだ。
「そもそもこんな雨の中生徒を放り出すとかうちの学校どうかしてるって……」
 まあこの町の人間は町長や校長を含めどいつもこいつも自由なので仕方がないといえば仕方がないのだが。
「てかこんな雨で蒼戒大丈夫かしら……」
 私は止めなく打ちつける雨粒の威力に耐えながら猫並みに水が苦手な彼氏のことを心配する。いやまあ今は自分の心配しろって話なんだけどさ。
「って噂をすれば蒼戒じゃない! あんたこんなところでどーしたの?」
 私は桜並木の東屋で雨宿りをしている蒼戒を見つけてそっちに駆け寄る。
「ん……、ああ明里か。見ての通り雨宿りだが?」
「そりゃわかるけどさ、サイトウはどうしたのサイトウは」
 ここにいるのは蒼戒だけ。蒼戒の双子の兄のサイトウこと春輝の姿はない。
「あいつなら一回先帰ってもっとデカい傘持ってくると言って俺をここに置いて走って行ったが……」
「あーー、なるほどあいつらしい……」
 サイトウは筋金入りの弟バカなので蒼戒が濡れないように、ということなんだろうけど。
「だが今の傘より大きい傘なんてあっただろうか……とずっと考えているんだがどう思う?」
「いや私に言われても。サイトウのことだからどっか買いに行ってたりしても不思議じゃない……」
「だよな……」
「というかあのバカはそうするわよ、多分。しっかし濡れたわねー。カバンまでびしょ濡れだわ……」
 私は東屋にカバンを下ろして呟く。持っていたタオルで軽く拭いてみるが、あまり効果は無さそうだ。
「お前が傘を差してるあたりこの雨のすごさがわかるな……」
「失礼ねぇ! 私だってそれなりに傘くらい使うわよ!」
「どうだか」
「というか使ってもこのレベルよ。しばらくここで雨宿りさせてもらうからね!」
「それは別に構わないが……」
 というわけで私たちは小雨になるのを待ちながらしばし他愛のない雑談に興じる。今日の夕飯どうしようとか、そんな部類の。
 そんなこんなで30分ほど経っただろうか。ようやく雨が小降りになってきた。
「だいぶ収まってきたわね……」
「ああ。多分春輝ももう来るだろうしお前はこの隙に帰るといい」
「ええ。悪いけどそうさせてもらうわ。もーあのレベルの雨はこりごり」
「だろうな……」
「じゃ、あんたも気をつけて帰りなさいね!」
 私はよいしょっ、とカバンを持ち上げて蒼戒に言う。
「ああ。お前こそ、気をつけて」
「ええ。じゃねー!」
 私は傘を開いて一気に駆け出した。こうして雨の中蒼戒と過ごすのも悪くなかったなぁ……、と思いながら。
(おわり)

2025.9.7《雨と君》

9/7/2025, 10:00:24 AM

《誰もいない教室》

 ある冬の日の放課後、誰もいない教室。俺(齋藤蒼戒)はひとり、だんだんと沈みゆく太陽を見ていた。理由は特にない。生徒会の諸々が終わって、教室に置きっぱなしにしていた荷物を取りに来たらたまたま太陽が沈むところだった。ただそれだけ。

続きは後で!!!


2025.9.6《誰もいない教室》

9/5/2025, 10:08:57 AM

《言い出せなかった「」》

「んじゃま……ハッピーバースデー、蒼戒!」
「お前もな」
 7月27日、午後7時過ぎ。俺(齋藤春輝)は双子の弟、蒼戒と共にカチン、と麦茶が入ったグラスを合わせる。
 今日は俺たち双子の16歳の誕生日。と言っても母さんは仕事でいないし、親父はとっくの昔に出て行ったので2人きりの誕生日パーティーだ。しかも蒼戒はこういう記念日とかに一切興味ないから、2人でおめでとうって言い合うだけの。
「やーっぱ毎年思うけどこれじゃ味気なくね?」
 俺は夕飯の冷やし中華を食べながら言う。作るのは蒼戒だから、夕飯が豪華になるわけでもなく、ケーキがあったりするわけでもないし。
「今更? 今更なのか? 何年この形式でやってきてると思ってる」
「いやしゃーねーのはわかってんだけどなーんか寂しいなーって」
 親父がまだ出て行ってなくて、母さんが今ほど仕事に追われてなくて、そして何より姉さんが生きていた頃は、もっと賑やかな誕生日だったのに。
「そうか? 俺はうるさいのは好きではないし、これで十分だと思うが」
「そう? ならいっか」
 蒼戒がいいならそれでいいと思えてしまうのは、やっぱり俺が弟バカだからだな。
「あ、そーいや今年はプレゼント用意したんだー。はい、これ」
「ありがとう……?」
 俺が差し出した包みを、蒼戒は疑問符を浮かべつつも受け取る。
「なんだこれ……、写真立て……?」
「そ。ちょっといいやつ」
「それはわかるが……飾る写真がないな」
「だからそれはー!」「?!!」
 パシャリ。
 俺は蒼戒の隣に行ってカメラを構え、写真を一枚。
「何するんだ春輝!」
「ふふーん、これ、飾ればいいでしょ」
 完全なる不意打ちを喰らってうろたえる蒼戒を横目に、俺は撮れた写真を確認する。うん、いい写真。
「ったくお前って奴は……。何が悲しくて自分の写真を……」
「いーじゃん別に。いい写真だよ?」
 俺は明日写真屋さんに行って印刷してもらおうと思いながら答える。もちろん、自分の分もな。
「そういう問題じゃない」
「えー。じゃ、これからもっといい写真撮ればいいじゃん」
 いつかできるであろう、彼女とのツーショットとか、いつもの5人の集合写真とか。
「………………」
「改めて、16歳、おめでとう。蒼戒」
 姉さんが死んだばかりの頃は、俺も蒼戒も心身共にぼろぼろだったからまさかこんな年まで生きれるだなんて思ってなかった。でも、ふたりでなんとかここまでやってきた。
「……ねぇ蒼戒」
「何だ」
「……ううん、やっぱ何でもないや」
「何なんだお前は。早くしないと麺伸びるぞ」
「あっ、忘れてた!!」
「ったく……」
 呆れたように蒼戒がため息をつく。
 蒼戒に言いかけた「大好き」と「これからもよろしく」は、何となく言えなくて、麺と一緒に飲み込んだ。
(おわり)

2025.9.4《言い出せなかった「」》

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