ロンリーメトロポリタン
雨の音はこんなにも五月蝿いのに私は1人ぼっち。
夜髪を梳かしながら考える。私はキラキラな生活に憧れて上京してきた。初めて東京に来た時の感動は忘れられない。
しかし思いもしなかったことだが、そんな生活にはすっかり飽きてしまった。飽きてしまったというより、憧れに届いて辿りついてしまった後の虚無。最近はなんだか分からない気持ちが溢れそう。カーテンのレースをなぞったり壁の凸凹を数えたりしてボーッとしてみる。突然、小さい頃踊っていたお祭りの踊りを思い出した。今日着ていた服のままで鏡の前に立って舞う。仰々しい服に身を包んだ幼い私が踊っている。派手すぎるピアスが汗と共に踊る。気づいたら涙も出てきていた。私やっぱり東京は合っていなかったのかもしれない。明日の夜明け、きっと、家に帰ろう。
【踊るように】
3時の来客
午前3時。今日も眠りにつけなかった。だめだなぁと感じた先の無気力。
鬱病になってから2年がたっていたらしい。今でも辛い時は本当にどうしていいのかわからなくなる。今もまた落ち込んで悩んでを繰り返すような地獄の夜だ。そう思ってため息を1つ吐いた。大学の友達はみんな楽しそうにしてるのに僕は駄目なやつだなぁ。虚しくなって無性に新しい空気が吸いたくなって窓を開けてみる。こんな夜でも時々大型トラックが通りを過ぎて行く。しばらく夜の街を2階の窓から眺めていると桜の花びらがふわんととんできた。小さくて桃色の桜。僕は丁寧につまんで眺めてみた、
誰にでも春は訪れる、のかもしれない。
【突然の君の訪問】
祈りを
遠くに鮮やかなオレンジに近い赤色がみえる。私は髪をゆってお釜でご飯を炊いていた。闇市でこしらえたものだ。
「お母ちゃん、お腹すいた」
育ち盛りの育之介が言う。こんな状況でももちろん減るものは減る。今日は七夕だからちょっと奮発。
嘘だ。本当は今日はあの人の誕生日だったのだ。この醜い争いに命を焼かれてしまったあの人。帽子を振って私に笑いかけ、空に舞っていったあの人。あなたにもう一度。
【七夕】
ふわふわな子
1人の友達がいた。その子は色白でふわふわしていて気分屋な子だった。私が話していてもつまらなそうにしているなと思ったら次の瞬間からゆらゆら笑いだしたりよくわからない子だった。でも一緒にいて楽しかった。私はちょっぴりその子に恋をしていた。
【友達の思い出】
おばけの反省
「この道の先には何があるの?」
「溺れない川があるんだよ。薄紫色のね。」
「へぇそりゃいいや、僕泳げないんだもの。ちょっと泳いで来るね!」
「あ、ちょっと」
おばけは独りが寂しかった。仲間が欲しかった。けれど、少し考えて、少し心がずきっとして、すうっと透明なマントを水深1mくらいのところに広げておいてあげた。男の子はゆらゆらにこにこ泳ぎ始めた。
【この道の先に】