最近、入道雲=積乱雲と知りました。
先週、移動中に同僚から気になる方の年齢について聞いてしまいました。
同僚は年齢をご本人に直接、聞いたそうで、それを私に教えてくれました。
正直に言いますと年齢を聞いてショックを受けました。
若いかな?と思っていましたが想像を超えていました。
冷静になればなるほどモヤモヤしてしまい、今度自分から直接、年齢を聞いてみてそこで区切りをつけようと思います。
好きな気持ちについては整理ができないし、きっとずっとモヤモヤしたり悩んだりするでしょう。
お恥ずかしいのだけど、スーツ姿が格好良くて、いつも真っすぐで、感情が顔に出てしまう素直なあなたに胸がときめきます。
人一倍の努力をされてきっと一生懸命生きてきたのだろうということも知りました。
またニコッとした笑顔は誰よりも輝いています。
でも最近はあなたの格好悪いところが垣間見えたりして残念に思うこともあったけど、そんな姿も違う一面でそれはそれで素敵でした。
あなたの前だとお話が気軽にできなくて、言葉に詰まり、笑顔でごまかしていました。
それにね、あなたへの気持ちがいっぱいだと食事の量が減るのだと知りました。
この気持ちを知ってから日常が彩られていき、活力が出て生きていく力になりました。
この文章があなたに届くことはないけれども、ありがとうと言いたいです。
そしてあなたがあなたらしく在って幸せでいますように。
笑顔でいますように。
君の手を離してしまった時、君の身体は光に包まれてふわりと何処かへ消えてしまった。
手の体温だけが残されたまま、それだけが残された君の名残だった。
1年後、僕は18歳になった。
あの頃の事はこの街のニュースになった。
僕も当然、警察を始めとする大人達に事情を訊かれたのだが、説明しても誰も信じてはくれなかった。
逆に疑われてしまうので、母親には泣かれ、父親には産まれて初めて頬を平手打ちされた。
ねえ、君はどこに行ってしまったの?
狭い街では噂は出回るのが早いし、肩身の狭い思いは度々あったのだが、コンビニでアルバイトを始めた。
その日は日差しが眩しくて蝉時雨が降り、とても暑かった。
コンビニの外の駐車場に出て、「暑い」と思わず声が漏れてしまう程、背中のシャツが汗で張り付いていた。
そして、ドアの左側に蹲っている人が目についた。
「大丈夫ですか?」
と声をかけると、
「よっちゃん、久しぶり」
昨日、別れたクラスメートの挨拶のように微笑んで君は居たんだ。
僕の喉がぎゅっと痛くなって、声が出てこない。
「彩乃、どこに行ってたんだ」
ギリギリと絞り出した声は震えていて、地面に思わずしゃがんでいた。
「私ね、異世界に行っていたの」
僕は、はーと呆れてしまってため息しか出てこない。
「それで、異世界に行って?」
「そこでね、私は勇者になったんだ」
「勇者って、お前、そんな突飛なこと誰が信じるんだ」
「そうだよね」
でもこれで信じてくれるかな?
と言いながら手首にピッタリとはまった腕輪を見せてくれた。
金文字で植物の文様が描かれて、透明なダイヤモンドを始めとする宝石が輝いている。
「それはどうしたんだ?」
僕は理解が追いつかないまま、言葉が他に出てこなかった。
彩乃はヘヘと笑って、
「これはね、あっちの世界では勇者にしか身につけられないんだって云われている宝物なの」
「それにね、一度身につけると魔王を倒すまでは外れないの」
目を伏せながら、最後に小声で言った言葉が僕の脳裏に響く。
彩乃は立ち上がって、ふふっと笑いながら、
「よっちゃんに会えて良かった。ごめんね、もう時間みたい」
ロングヘアーの黒髪が揺れて、振り返りながら、
「また会いに来るね」
と目尻を下げた笑顔で光に包まれて消えていった。
取り残された僕にはしばらく君が消えていった場所を見つめることしかできなかった。
コンビニから見下ろす遥か向こうにある街に雨を降らせようと入道雲がむくむくと空に浮いていた。
「あいつ、無理して」
と呟いた言葉は蝉の鳴き声に消えていった。
僕が君と最後に会った日のことはまた別の機会で述べるとしよう。
しとしとと小雨が降っていた。
傘をささずに二人で大きめの石が置いてある場所に立っていた。
二人の周囲にも木の枠で囲った石が等間隔で置いてあった。
「ねえ、みんな死んじゃうね」
「ああ」
お墓の前で立っていた私たちの隙間を梅雨の湿気を含んだぬるい風が吹く。
「最近ね、夢では泣いているのに、現実では泣けないの」
「ああ」
「目が乾いてしまったみたい」
私は苦笑しながらお墓を見つめる。
お墓は少し街を見渡せる丘にあり、その街は空に続く黒煙と大切な人達の家や建物の残骸で目を逸らしたくなる。
私たちの大切な人達がいた街、そして奪われつつある街をずっと見ていることは心がぎゅっとして、ざわざわして無理だった。
「彰人くん、私たちは生き延びれるのかな?」
一番、不毛な言葉を隣に立つぐんぐんと背が伸びつつある彰人くんを見上げながら問いかける。
「綾、俺は変えるぞ」
たった一言つぶやいた言葉に首を傾げる。
「過去は変えられねえ、でも今と未来は分かんねえだろ」
彰人くんは握りしめていた拳をふっと緩めて、手のひらを見つめる。
その横顔は私が知らない彰人くんで、だいぶ大人びて見えた。
燃えるような瞳と食いしばった口元が彰人くんらしさがあったが、彰人くんの力強い言葉に私の心の中で火が灯る。
(これは希望なのかな)
私はそうこっそりと心の中で思いながら、まつ毛を瞬きながらさっきまで直視できなかった崩壊しつつある街を見る。
今日は曇天の梅雨模様だった。
国によって簡易的に作られたお墓はひっそりと寂しかった。
そしてそこには大切な人たちの遺体が眠っていると言いたいが五体満足の者は少なく、一部の者がほとんどだった。
隣にいる彰人くんのごうごうとした瞳は街の上空を支配する侵略者達に向けられていた。
そこには見たことのない無機質な物体が橙色に染まる空に浮かんでいて、戦闘機との戦いが繰り広げられていた。
「俺たちの街なんだ」
短い言葉だったが、私も、
「うん」
と応えた。
月に願いを
あの頃の私達はどこか欠けたパズルのピースをそれぞれ抱いていて満たされていなかったね
それでもあなたが居なくなって残された家族は一生分の涙を流したよ
そして地図はもう完成することはなくてあなたの分のピースは欠けたままだよ
あの頃は分からなかったけど、あなたは家族を守ろうとしてくれたのだと今なら分かるよ
あなたの優しすぎるところに一人で抱えていって逝ってしまったことが今でも胸が苦しいんだ
そしてあの時、無力だった私も悩んで悩んだけど今はあなたの居場所を守ることに決めたよ
あなたの眠る場所にあなたが好きだった缶の紅茶を置いていってくれる人がいて、ずっとありがとうと言いたいよ
ふわっとたまにあなたの香水が薫ることがあって傍にいてくれる気がするよ
だからお月さま、私の大好きな人達が眠るお墓を見守っていて
あの頃の私へ
大丈夫、生きていますよ。
しかも元気にやっています。
働いているし、恋だってしてます。
友達もいます。
辛い経験もあるけれど、きっとあなたが見たら今の私の姿に驚くでしょう。
きっと今あなたは先生に言われた言葉に絶望しているところでしょう。
もう何の希望もないでしょう。
それでもそこから歩いていく未来に私は待っています。
悩んでいるあなたに
「自分を許し、他者も許してください」
「周りの人々にありがとうを」
「人はあなたが思っているより、怖くないです」
言葉を贈ります。