ニラとニンニク増しマシ餃子
父の好物だった
キャベツなしで豚とニンニク・ニラのみ
今ではニラ餃子ってよくあるけれど
昔は珍しく、父母が散々食べ歩いて
これだ!と辿り着いた我が家の定番
テーブルを挟んで母とわたし
二人でお喋りしながら餃子を包む
とりとめもなく 和やかで楽しい
ニンニクの匂いにお腹を空かせて
父は庭で犬を遊ばせている
なんでもない 日常風景
餃子のひだをたたみながら
急に身体の奥から背中へ胸へ
強烈な悲しみが広がっていく
なぜ?嫌だいやだ
このままいさせて
醒めたらもう会えなくなる
目を開けても胸は苦しいまま
こんなにもあの頃が恋しかったんだ
「夢が醒める前に」
#367
夕陽が海を照らして
ゆらめく光の道ができる
まぶしくて視線を横に移すと
ふいにひざまずく君
強い潮風で声が途切れる
でもわかる
手の中の小箱を開いて
わたしに聞いてくれているの
ずっと行きたいと話していた
この美しい場所で
「胸が高鳴る」
#366
「バツイチなんですか?」
初めて会った人にいきなり言われて驚いた。
「はい、そうですけどどうして…」
「いや顔に書いてあったんで」
聞くのは失礼かと思ったけれど、わざわざ顔に書いてあるってことは何か意味があるのかとも思い…とのこと。
さっきからすれ違う人々がちらちら俺を見ていたのはそういうわけか。トイレの鏡で確認。ほんとだ、右頬に薄墨くらいのかんじで「バツイチ」文字通り。
なんでだよ。書いた覚えも書かれた覚えもない。
まぁ別に事実だしな。隠す気もないけど。
その後も時々聞かれはするが、そこから根掘り葉掘りプライベートを詮索されることも特にない。自分としては深く長いストーリーが横たわってはいるけど、他人からしたら「そうなんですね」ってだけなんだよな。
気をつけて道行く人々の顔をみてみたら、時々同じように「バツイチ」さらに「バツ2(3や4も)」と頬に表示されてる人がいて、思ったより数も多かった。
人の一属性に過ぎないことだよな。別にデメリットもなくて気にならなくなった。
思えば結婚すると人は自分から指輪をして表示するよな、昔から。あれと同じか。内容は逆だけど。IQとか年収とか、余命とかが表示されるよりマシか。いや、意外とそれも気にならなくなるものかもな。
本人にとって重要なことでも、他人の属性なんて「そうなんですね」って程度のことなんだろう。
余計な関心をもって勝手なジャッジしなくなるなら、日替わりでみんな何か表示されてみるのもアリかもな。いい出会いがあるかもだし。
「不条理」
#365
『全米が泣いた』
「泣かないよ」
#364
いぬがこわい
いぬをなでるのはいやだ
いぬを飼うのもいやだ
いぬとおさんぽしたくない
家に帰っていぬがとびついてきたらいやだ
しっぽをふってうれしそうなのもいやだ
おすわり、と言ってちょこんとすわるのも
ぜんぶぜんぶいやだ
なかよくなりたくない
なかよくなって
はなれられなくなって
そしてお別れするのがいやだ
こんなに大好きになって
二度とあえなくなるなんて
だからいやなんだ
だからこわいんだ
「怖がり」
#363